全国漁業協同組合連合会の岸宏会長は1月27日、宮沢洋一経済産業相を経産省に訪ね、東京電力福島第1原発にたまった放射能汚染水を安易に海へ放出しないよう、要請しました。原子力規制委員会が、セシウムなどを取り除いた後の水に関して2017年以降、海洋放出は可能との見解を示したことに伴う動きで、岸会長は規制委の方針を「極めて遺憾だ」と批判しました。
規制委は21日、高濃度汚染水を多核種除去設備(アルプス)で処理した水を2017年以降に海洋放出することを明記した「中長期リスクの低減目標マップ」をおおむね了承しました。しかし、アルプスで処理しても放射性物質のトリチウム(3重水素)は取り除くことができません。全漁連の国への要望書では「汚染水の安易な放出を行わないとする方針を今後も継続し、漁業者、国民の理解を得られない汚染水の海洋放出は絶対に行わないよう強く求めるものである」としています。
岸会長は「(地元の漁業関係者は)一日も早く操業を再開したいのに、風評被害の上乗せになることを心配している」と懸念を表明。宮沢経産相は「海への安易な放出を行わないという政府方針は堅持している」と説明しました。
同席した福島県漁業協同組合連合会の野崎哲会長は、経産相への要望後、記者団に対し「規制当局の発信にかなり不安感を持ったが、経産相の発言があったので、よろしくお願いしたい」と述べ、慎重な対応を求めました。
(「しんぶん赤旗」2015年1月28日より転載)