関西電力の原発で27年間、配管の点検などに従事し、悪性リンパ腫を発病した下請け労働者(62)が、このほど神戸西労働基準監督署で労災認定されました。申請から1年、認定を勝ち取った男性は「福島で作業している人たちにも、国は対応してほしい」と語っています。(兵庫県・秋定則之)
神戸市北区に住む男性は、1983年から27年間、関電の3次下請けの社員として高浜、大飯、美浜などの原発で、配管のバルブの点検、保守作業に携わってきました。「高い放射線量で、15分しか作業できないこともあった」といいます。放射線と被ばく線量はきちんと管理されていると信じていました。「会社や関西電力は私を守ってくれていると思っていました。しかし、それは私の思いこみでした」
2011年7月、健康診断で悪性リンパ腫が見つかり、ただちに手術し、抗がん剤治療をうけました。入院中に定年退職となり、会社からは何の連絡もなしに健康保険を切られ、労災の説明もありませんでした。退職金は、医療費の支払いで無くなりました。
放射線管理手帳の記録によると、27年間に浴びた線量は168・41ミリシーベルトでした。妻が職業病を疑い、11年12月に労災申請のために訪れた兵庫労働局では、「5年間で200ミリシーベルトが基準。難しい」と門前払いされました。
12年2月、体調も生活も大変なときに、「北生活と健康を守る会」の朝倉宏氏と出会い、生活保護を申請。藤原精吾弁護士を紹介され、12年12月に神戸西労働基準監督署に労災申請し、病気の業務起因性に関する医師の意見書も提出しました。
国は安全・健康に責任を
原発などの作業による被ばく限度は年間50ミリシーベルト、5年間で100ミリシーベルトが国の基準です。白血病の労災認定基準は、1年以上従事し、年間5ミリシーベルト×従事年数です。悪性リンパ腫は基準がなく、発病リスクは白血病の5分の1とされ、25ミリシーベルト×年数が目安となります。男性は個別審査の対象とされ、厚生労働省の専門家が調査し、放射線の種類や労働実態などから、1年後の13年12月に認定されました。男性は「認定を受け、本当に助かりました。福島で作業している人に何かあったら、国がすぐ対応してほしい」といいます。
藤原弁護士は、被ばく線量をごまかすことが広くおこなわれ、放射線管理手帳に正確に反映されてないことや、原発労働者の疫学的根拠、長期的なリスクのデータが不十分なことを指摘。原爆症認定で、国が因果関係をなかなか認めない困難さを強調し、「危険な作業はわかっているのだから、厚労省は労働者の安全と健康、労災認定に前向きな対応がいる」と話しました。