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命と安全 置き去り 川内原発の審査書決定 規制委「適合」・・意見1万8000件に背

(写真)九州電力川内原発=鹿児島県薩摩川内市
(写真)九州電力川内原発=鹿児島県薩摩川内市

 原子力規制委員会は9月10日、九州電力川内(せんだい)原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)について、再稼働の前提となる規制基準に「適合」とする審査書を決定しました。これを受け政府は「判断を尊重し、再稼働を進める」(菅官房長官)と表明していますが、地元などからは「住民の命と安全の置き去りだ」と怒りの声が上がっています。日本共産党原発・エネルギー問題対策委員会の笠井亮責任者は「再稼働ありきの審査書の撤回」を求める談話を発表しました。

 規制委は、審査書案に対する意見公募を1カ月間実施し、1万7819件が寄せられました。しかし、言葉の細かい直しの修正のみで、結論は変更しませんでした。

 

(写真)薩摩川内市の九州電力営業所前で「川内原発再稼働反対!」とコールする人たち=8月31日
(写真)薩摩川内市の九州電力営業所前で「川内原発再稼働反対!」とコールする人たち=8月31日

 公募意見は、再稼働に対する国民の不安や疑問を反映し、「地域住民の避難計画が原子力規制委員会の審査対象になっていないため、審査書案には不備がある」「カルデラ噴火の可能性は十分に小さいと判断する根拠や基準が不十分」「福島第1原発で現に起きている汚染水事故対策について検討しておらず、防止策もとられていない」など、防災や火山に関するものが多かったといいます。しかし、規制委は「(避難計画は別の法律に基づいて)対応が講じられる」「(九電の火山)評価を確認している」「(汚染水は)発生させないことが重要」などと、まともに答えていません。

 審査の終了には、今後二つの手続きが必要です。また、運転までには使用前検査を実施します。九電は、9月中に工事計画認可申請書の再提出をめざすと説明しています。

 地元では再稼働に反対する声が広がっており、薩摩川内市内のアンケートでは85%が再稼働に反対。同市に隣接する、いちき串木野市では、人口の過半数に当たる1万5000人以上の反対署名が集まっています。再稼働に意見を述べることができる安全協定を結んでいるのは薩摩川内市と鹿児島県のみですが、事故時の防災対策を求められた周辺自治体の意見も聞くべきだという声も上がっています。


 

「川内」審査書決定・・住民の不安は置き去りなのか

 原子力規制委員会が九州電力川内(せんだい)原発1、2号機(鹿児島県)について、再稼働の前提となる新規制基準に「適合している」との審査書を決定したのは、住民の不安と反対の声を踏みにじるものというほかありません。審査に合格しても、地震や津波、火山噴火などに対する原発の安全を保証したわけではありません。事故が起きた場合の住民の避難計画などはもともと基準の対象外です。こうした審査で原発を再稼働させるなどまったく論外です。審査書は撤回し、川内原発をはじめ原発の再稼働は中止すべきです。

意見公募の声を一蹴

 審査書は7月はじめに規制委が案文を公表したあと、わずか1カ月だけ国民から「科学的・技術的意見」に限り意見を募集したものです。規制委によれば、意見公募には1万8000件近くの意見が寄せられたといいます。川内原発再稼働への住民と国民の不安は明らかです。にもかかわらず規制委は、「必要な対策は講じている」などの一言で国民の声を一蹴しました。何が何でも再稼働を急ぐ、安倍晋三政権と原子力規制委の姿勢は安全とは無縁です。

 ちょうど3年半前の東日本大震災にともなう東京電力福島第1原発などの大事故は、原発が大きな地震や津波に耐えられず、しかもいったん炉心の溶融などの重大事故を起こせばコントロールできなくなる、危険なものであることを浮き彫りにしました。事故はいまだ収束のめどが立たず、汚染水漏れなどが深刻化しています。ことし相次いで出された関西電力大飯原発の運転再開中止を求めた福井地裁判決や、東電の事故による被災者の自殺と事故の因果関係を認めた福島地裁判決は、原発事故の取り返しがつかない深刻さを改めて明らかにしました。

 原子力規制委員会は福島原発の事故後、新しい規制基準を作り、地震や津波の基準を引き上げ、これまでは起きないことを前提にしていた過酷事故への対策も求めました。しかし、基準を多少引き上げても、それ以上大きな災害が起きない保証はありません。過酷事故に対処するといっても、基準が求めるのは非常電源車の配備ぐらいで、欧米で求められている溶け落ちた核燃料を受け止める装置や格納容器の壁を2重にするなどは求めていません。とても「世界一」の基準などとは呼べません。

 とりわけ川内原発の場合深刻なのは、九州に多い火山噴火の影響です。審査書は大きな噴火はめったに起きないし、監視していればわかるとしました。ところが審査書案が発表されたあとの規制委の専門家の会合では、「予見できない」という意見が相次ぐありさまです。こうした意見にも耳を貸さず審査書を決めたのは、安全を守る姿勢の欠落を証明しています。

再稼働断念し「原発ゼロ」

 現在日本の原発は事故や点検中のためすべて運転を停止しており、稼働中の原発は1基もありません。川内原発は安倍政権や電力業界、財界などが再稼働の第1号にしようとしている原発です。原発の商業運転が始まって48年、原発稼働ゼロの最初の夏となったことしの夏も原発なしで電力がまかなえているのに、再稼働を強行する根拠はありません。原発再稼働の企ては断念し、停止したまま、「原発ゼロ」を実現すべきです。

 

 

(「しんぶん赤旗」2014年9月11日付け)

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