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原発避難自殺 福島地裁判決に従え・・遺族ら東電に謝罪・賠償要請

 東京電力福島第1原発事故に伴って避難生活する渡辺はま子さん(福島県川俣町、当時58歳)の自殺と事故に因果関係があるとして東電に損害賠償を命じた福島地裁勝利判決(8月26日)をうけて、夫で原告の渡辺幹夫さんと福島原発被害弁護団の広田次男共同代表らは28日、東京電力の廣瀬直己代表取締役にたいし、判決を真摯に受け止め原告らに謝罪し、判決内容に従ってただちに賠償支払いを応じることを強く求める要請をおこないました。

 いわき市や川俣町などからの支援者ら総勢16人が東電本店を訪ねました。2時間に及ぶ要請・交渉は非公開で、東電側は福島原子力補償相談室の島田恵介副室長らが応対しました。

 夫の幹夫さんは「あんなに明るかったはま子がなぜなくなったのか、この苦しみ。部落までバラバラにされた悔しさ。いろいろ話した。どんな暮らしだったのか実家にきて(役員は)自分の目で見てくれ」と話したといいます。

 広田弁護士によると各人が判決にたいする思いを語り、控訴せずただちに賠償することを求めました。島田副室長は、控訴するかどうかも含めて「ここでの即答はできない」との答えに終始したといいます。

 弁護団は誠意ある回答を求め、控訴期限前日の9月8日に東電と再度交渉することで合意しました。

 交渉の冒頭に東電側が支援者らを「部外者」と決めつけ、交渉に同席させない態度に出たため、参加者が次々に抗議する場面がありました。抗議をうけて全員で交渉に臨みました。

 

福島原発自殺訴訟・・司法の批判を国と東電は聞け

 「自死と事故は相当因果関係がある」―東京電力福島第1原発の重大事故で避難させられていた福島県川俣町の女性が自殺(自死)した問題で、福島地裁が明確に因果関係を認め、東電に約4900万円の賠償を命じました。事故から3年半近く、いまだに不自由な避難生活を送らざるをえない被災者の切実な声にこたえたものです。政府も東電も、原発事故が引き起こしている悲惨な実態を直視し、自らの責任を明確にするとともに、二度と事故を繰り返さぬよう福島県内のすべての原発を廃炉にするのをはじめ、「原発ゼロ」の日本にむけて踏み出すべきです。

住み慣れた故郷を追われ

 福島地裁の判決は、女性の自殺は原発事故さえ起きなければありえないものだったことをはっきりと指摘しています。司法が原発事故にともなう自殺と事故の関連を認めたのは今回が初めてです。

 女性は原発事故で避難させられるまでの58年、川俣町の山木屋地区で暮らし、夫とともに3人の子どもを育ててきました。判決は女性が暮らした地域と自宅が、女性がもっとも平穏に生活できる場所だったと指摘します。2011年3月の原発事故後の計画的避難区域への指定で避難させられたことは、女性からその安住の地を奪うものでした。判決は避難によるストレスが女性をうつ状態にしたと、自殺と避難の関連性を明確に認めています。

 事故から3カ月半余りあとの11年7月、一時帰宅した自宅で焼身自殺した女性の死は限りなく痛ましいものです。判決は、一時帰宅が終わり、避難の再開が迫ったことが女性を追い詰めたと指摘します。まったく同感です。判決は、東電は事故によるストレスで自殺者が出ることは予見できたと、東電の主張を退けました。

 東電福島原発事故によって飛び散った放射性物質の汚染などによって暮らしを脅かされ、住み慣れたふるさとを追われた住民はいまだに十数万人に上ります。農業など生活の基盤を破壊され、なれない生活に心身をすり減らしながら、持病を悪化させ、病気を発症した人は少なくありません。

 福島県内で原発事故に関連して亡くなった人はすでに1000人を超し、その中には自殺に追いやられた人も数十人にのぼります。東日本大震災で被災した宮城県や岩手県の震災関連自殺者を大幅に上回り、とくに福島の場合、避難の長期化とともに関連死や自殺者の増加が指摘されています。

 政府や東電はこうした実態を直視すべきです。自殺した女性の家族が裁判に訴えなければならなかったこと自体、政府と東電の被害賠償に対する消極的な姿勢を浮き彫りにしています。政府と東電は判決を真摯(しんし)に受け止め、被災者の声にこたえるべきです。

二度と事故を繰り返さぬ

 放射性物質による汚染を取り除く除染とともに、すべての被災者の経済的・精神的被害への賠償は国と東電の責任です。実際には対象を狭めたり賠償を値切ったりが横行しています。政府と東電はその態度を改めるべきです。

 根本的には原発事故を引き起こした国と東電の責任を認め、二度と繰り返さないよう原発からの撤退を進めることです。そうしなければ貴重な人命が失われたことを受け止めたことにはなりません。

(「しんぶん赤旗」2014年8月29日より転載)

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