支援団体が報告書
24時間通話無料でどんな相談でも受け付け、被災3県(岩手、宮城、福島)に専用の相談回線を設けている「よりそいホットライン」。運営する「一般社団法人社会的包括サポートセンター」はこのほど、2013年度の報告書を発表しました。
被災地からは54万件以上の電話があり、DV(配偶者、恋人などからの暴力)など女性からの相談の割合は全体の8・3%と全国の4・8%よりも高く、相談の多くは「家庭の問題」です。
報告書では、心の悩み、DV、暮らしやお金の悩みなどが絡み合っていることが多く、被災後の家族を中心とする人間関係の崩壊と暴力・貧困の課題がひとつながりになっていることがみえてきていると指摘しています。
さらに、被災地報告として、自殺防止の相談の割合も全国の約3倍であり、困窮者対策、孤立死防止支援などが重要で、長期的に寄り添い続けることが求められるとしています。
急がれる支援策・・東北包括コーディネーターで1人親の支援をする「インクルいわて」理事長の山屋理恵さんの話
もともとあった貧困などの問題が被災したことによって深刻になったのだと思います。自己責任論では貧困の連鎖は止められません。
被災地では役所の人も顔見知りという狭いコミュニティーのなかで、家庭の問題をどこにも相談できず、社会的に孤立している人も多くいます。相談の中で離婚原因の8割がDVです。声が上げられないまま家族の問題も深刻化していると思います。
困難な状況に陥っている人は、複数の問題を抱えています。そのような人たちは、時間がたつにつれて追い込まれていきます。早期に支援にたどり着くことが必要です。
既存の制度を活用するだけでも多くの人が救われます。しかし、生活保護の捕捉率は低く、バッシングもあります。生活保護を利用することで、その地域で生きていく、生活を建て直す次の一歩につながっていくものと捉えることが重要です。
震災が起き、一番問題が凝縮されたのが1人親という認識で「インクルいわて」を立ち上げ、活動してきました。日本は1人親、子どもの貧困が深刻です。
被災者支援を充実させる取り組みが社会の転換点になってほしいと思います。
今年だけで10人も・・福島・原発災害関連自殺
東京電力福島第1原発の過酷事故と避難生活を強いられた女性の自殺との因果関係を認める裁判が8月26日にありましたが、政府が認める福島の原発災害関連自殺がことし7月までに10件も起きています。被災3県のうち宮城が2人、岩手が1人亡くなっていますが、福島の10人は、突出した多さです。生活基盤が破壊された避難生活が長期化するなか、将来展望を開けない原発災害の深刻さを示しています。
震災が起こった2011年に3県とも2桁にのぼった自殺が、翌年に8人(岩手)、3人(宮城)と減ったのにたいし、福島県だけ13人と増え、2013年に23人も命を絶ちました。
福島での自殺者をみると、年齢別には50代(16人)、60代(11人)が高い。原因・動機では、健康問題や経済・生活問題が多数あがっています。
内閣府は6月に初めて被災3県自殺対策会議を福島市内で開きました。内閣府の担当者は、「自殺する要因は一概にはいえないが、避難生活が長期化するなかでストレスもある。仮設住宅での見守り支援などをすすめていますが、仮設住宅も広域で数も多く行政だけでは対応できない。NPOとの連携などを話し合ったが、支援の人材は、まだまだ不足している」と話しています。
(「しんぶん赤旗」2014年8月28日より転載)