米国中部で最近、謎の地震が相次いで発生し、人々を不安がらせています。米コーネル大学などの研究グループが、シェールオイルやシェールガスの採掘に伴って発生する廃水をふたたび地中に注入していることが原因だとする研究結果を米科学誌『サイエンス』電子版(7月3日付)に発表しました。このまま操業を続ければ、より規模の大きな地震の発生につながる恐れがあると警告しています。
(間宮利夫)
米国中部、オクラホマ州の州都オクラホマシテイーから東北東に約20キロメートルのところにあるジョーンズ市では、2008年以降、これまでの地震の回数が2500回を超えたといいます。
オクラホマ州ではもともと地震がそれほど多くありませんでした。ところが今年は6月15日の時点ですでに、地震の規模を示すマグニチュード(M)が3以上の地震に限っても190回を数え、米国で最も地震が多いといわれるカリフォルニア州の同71回を大きく上回る状況です。(図)
廃水再び地下に
地震の急増は、オクラホマ州内で活発化したシェールオイルやシェールガスの採掘に関係があるとみられています。
地下の頁岩に超高圧の水を注入すること自体、地震発生の要因となると考えられていますが、採掘に伴って大量に発生する廃水を再び地下に注入することが問題視されています。しかし、ジョーンズ市のすぐ近くではこうした注入が行われていなかったため、頻発する地震との関係ははっきりしていませんでした。
研究グループは、オクラホマシティーの南東にある4ヵ所の廃水注入井戸に着目しました。これらの井戸では、毎月50万トン近い廃水が地下2〜5キロメートルに注入されています。コンピューターシミュレーションで井戸から注入された廃水による周辺の地下の間隙水圧の変化と、オクラホマ州で頻発している地震との関連を調べました。
その結果、間隙水圧の変化は廃水注入井戸から最大35キロメートル離れたところまで及ぶことが判明しました。ジョーンズ市もその範囲に含まれています。間隙水圧の変化が0・07メガパスカル(0・7気圧)を超えると地震を起こすこともわかりました。米国地質調査所(USGS)の地震学者は「これほど遠くまで影響が及んでいるとは驚きだ」とコメントしています。
大学の塔が倒壊
オクラホマ州では廃水注入が原因とみられる一連の地震でこれまでで最大となるM5・7の地震が11年11月に発生し、震源から25キロメートル離れた大学の塔が倒れる被害が出ています。周辺も含めると120万人以上の人口を抱えるオクラホマシティーの近くにはM7級の地震を引き起こす可能性のある断層があり、研究グループは廃水注入がこの断層の活動になんらかの影響を及ぼす可能性があるとしています。
シェールオイルやシエールガスの採掘に伴うとみられる地震は、オクラホマ州に隣接するアー力ンソー州やテキサス州、さらにオハイオ州などでも起こっています。また、採掘のために高圧注入される水にはさまざまな化学物質が添加されています。これらの化学物質による地下水の汚染が問題になっているほか、井戸水にシエールオイルやシエールガスが混じるなどの現象も確認されています。
こうした事態に、オクラホマ州などの当局は、シェールオイルやシエールガスの事業者に今年末までに廃水の注入量と圧力をこれまでの月ごとから日ごとに報告することなど規制の動きを強めているといいます。
(写真は米国地質調査所=USGS提供、図は『サイエンス』から)
シェールガス・・・
非常に細かな泥の粒子が水中で堆積しでできたシェール(頁岩)と呼ばれる岩石に含まれる天然ガス成分のこと。石油成分を含むものはシエールオイルと呼びます。本のページ(頁)のように薄くはがれることから頁岩の名がつけられました。頁岩には石油や天然ガスを含んでいるものが多いことが古くから知られていましたが、取り出すのが難しくコストがかかることから採掘が見送られてきました。しかし、地下の岩石に超高圧の水を注入して割れ目をつくり、水とともに資源を回収する水圧破砕法が頁岩にも応用されるようになり、米国では1990年代から採掘が始まりました。
(「しんぶん赤旗」2014年8月24日より転載)