本格的な夏の暑さが近づいてきました。エアコンやクーラーなど、電力需要がうなぎのぼりに増える時期です。政府や電力業界は1日から節電協力要請期間をスタートさせました。今年は去年までと違い、全国で1基の原発も運転していません。それでも電力の予備率は「3%」を超え、需要を賄える見込みです。節約に心がけるのはもちろんですが、いまだ収束の見通しがたたない東京電力福島原発の事故を直視し、いったん事故を起こせば取り返しがつかないことに思いをはせて、再稼働させず、原発のない日本を一日も早く実現することが重要です。
節電定着し「3%」の余裕
東京電力福島原発の事故後、全国の原発は故障や定期点検で次々停止しています。昨年夏は事故後再稼働した関西電力の大飯3、4号機(福井県)が運転していましたが、今年はそれも停止しており、全国48基のすべての原発が運転を停止した状態です。それでも電力が賄えるのは、天然ガスを使った火力発電所などが発電を拡大していることもありますが、事故後の3年間、節電や省エネの対策が進んできたからです。
電力会社や経済産業省の見通しでも、この夏の電力需給は、原発がない沖縄電力を除く全国9電力の合計で760万キロワット、4・6%の余裕を見込んでいます。電力は3%の余裕(予備率)があれば心配ないといわれますから、この夏の電力が原発なしでも賄えるのは明らかです。このうち北海道、東北、東京の東日本3社は6・9%の余裕で、中部、関西など中部と西日本の6社は2・7%ですが、東日本から西日本へ周波数調整をして送電すれば、3・4%の予備率になる計算です。
電力会社や経産省は、関西電力や九州電力の予備率が低いことを理由にして、九州電力の川内原発(鹿児島県)などの再稼働を狙い、天然ガスなど火力発電に依存すれば電力のコストが高くなるので、料金を値上げしなければならないと主張します。しかし、政府・財界と一体になって安全性を無視して原発の建設を進め、原発に大幅に依存する体制をつくってきたのは電力会社です。原発依存度がずば抜けて高い関西電力や九州電力はその最たるものです。自らの見通しの甘さを棚に上げて、電力が足りないというのは、まさに無責任の極みというほかありません。
しかも電力会社は、「総括原価方式」の名で、発電にかかったコストに、もうけまで上乗せして電気料金を決めています。原発が止まり、火力発電にお金がかかるからと値上げを繰り返すのは、開き直りそのものです。原発の再稼働や値上げをいう前に、原発依存と、もうけまで上乗せした「総括原価」の仕組みを見直すべきです。
福井地裁判決の重み
東京電力福島原発事故は発生から3年3カ月あまり、いまだに事故収束も廃炉などの見通しも立ちません。事故後初めて原発運転の差し止めを命じた関西電力大飯原発についての福井地裁判決(5月)は、ひとたび事故が起きれば「生存を基礎とする人格権」を侵害する原発事故と、電気代などの問題を同列に論じるようなことは許されないと指摘しました。判決の重みは明白です。電力会社の経営などを口実に再稼働を急ぐ態度に、何の道理もないのは明らかです。
(「しんぶん赤旗」201年7月4日より転載)