福島・田村 国が避難解除しながら
広域を放射能で汚染させる過酷事故を起こした東京電力福島第1原発から20キロ圏内で、国と東電が「減容施設」という名の放射能ゴミ専用の焼却場の建設計画をすすめようとしています。自宅に戻ろうとする避難住民からは、「国は避難指示を解除する一方で、危険なものをおしつけようとしている。ちぐはぐな対応。おかしい」と反対する声が高まっています。 (阿部活士)
考える会も結成
建設計画があるのは、国が避難指示を解除した田村市都路(みやこじ)古道地区と川内(かわうち)村の境にある東電用地です。環境省が昨年(2013年)7月、都路町区長会と川内村区長会を対象に、「減容化事業の事前調査にかかわる」説明会を開いて表面化しました。
説明会の資料などによると、焼却するのは、福島県内で放射能に汚染された稲わら、牧草、たい肥、下水汚泥などと、田村市と川内村の除染作業で集めた草木です。
いずれも、既設の焼却炉では燃やせない放射能で汚染されたゴミです。「減容」施設と
は、放射能に汚染されたゴミの「体積を減らす」意味です。しかし、放射能が減るわけではありません。
ことは放射能にかかわる問題として、危機感をもった住民が昨年10月に「放射能ゴミ焼却を考える都路・川内の会」を結成。環境省にたいし、都路全地区の全住民への説明会を求める一方で、事態を知らせるビラを作成し、仮設住宅などに配布してきました。
戻りたくない
「地元では、“放射能はもうたくさん”という気持ちです」と話すのは、同会の結成からかかわってきた都路合子(ごうし)地区の男性(70)。「どんなに国が『安全』と言っても、不安な気持ちが出るのは、当然です。放射能ゴミ焼却場計画があるため、避難解除された都路に戻りたくないという人もいます。原発や放射能にたいする怒りや不安です。原発事故と放射能で、家族はバラバラにされ人生を変えられているわけですから」と話します。