茨城県東海村にある日本原子力研究開発機構と高エネルギー加速器研究機構が共同運営する大強度陽子加速器施設(J―PARC)で装置から放射性物質が漏れて施設内にいた6人が被ばくしたほか、外部にも漏れ出す事故があったことが5月25日、明らかになりました。
装置の誤作動が原因でしたが、そうしたことが起こるとは想定されておらず、十分な漏えい防止策もありませんでした。原子力規制委員会への報告も事故の発生から約1日半後でした。
事故は23日午前11時55分ごろ発生。当初、放射線管理区域外への漏えいはないと判断していましたが、24日夜になって区域外への漏えいが判明。同日午後10時15分に規制委に報告しました。
原子力機構などによると、施設では、加速器で生成した陽子ビームを標的の金に当てて素粒子を発生させる実験をしていました。しかし、装置の誤作動でビーム出力が数百倍に上昇。発生した放射性物質が、高温になって蒸発した金とともに施設内に漏れ出しました。
実験装置は一時停止しましたが、担当者らは過電流などを防ぐ安全装置が作動したと考えて実験を継続。施設内の放射線量上昇に気付きましたが、正常運転時にも装置内にある空気から微量の放射性物質が生じることがあるため、すぐに減衰すると考えて換気扇で外部に放出しました。ビームの異常で想定しない放射性物質が出ていることは、その後にわかったといいます。
原子力機構は、事故後に施設に出入りした計55人の被ばくの有無を調査。25日夜までに大学院生や高エネ研職員ら計6人で最大1・6ミリシーベルトの内部被ばくを確認しました。14人は検出限界未満でした。機構は26日以降も調査を続けます。