5月28日の衆院本会議で審議入りした電気事業法改定案について、日本共産党の塩川鉄也議員が行った質問は次の通りです。
本法案で問われているのは、地域独占、発送電一貫体制という戦後の9電力体制を変革し、発送電分離などの「電力システム改革」を実現するか否かであります。
この改革の直接の契機となった3・11東電福島第1原発事故からの教訓をふまえ、三つの角度から伺います。
第一に、原発との関係です。
事故を起こした福島第1原発1号機から4号機は、ゼネラル・エレクトリック(GE)社及び東芝製のマークⅠ型です。国会事故調の指摘を含め未解明な事故原因を究明し、製造者責任こそ問うべきではありませんか。
また、原発の再稼働など論外だと思いますが、これを認めるのですか。
そのGE、日立、東芝、ウエスチングハウスおよび三菱重工業の原子炉メーカー5社を中核とするいわば「日米原発利益共同体」は、世界の原発市場のおよそ4割を占めています。日米同盟を基礎とした原発輸出によって、さらなる市場の獲得を目指すことは、福島事故の教訓を無視し、その被害者の願いに対する許し難い背信行為であり、人類の未来に対する挑戦と言わざるをえないものです。
NPT=核不拡散条約の未加盟国で核兵器保有国のインドに対し、唯一の被爆国で福島事故を経験した日本が、原発輸出を約束するなどもってのほかであります。
第二に、東電改革との関係です。
放射能汚染水事故は、仮設設備などコストを優先させ東電任せにしてきた、政府の無責任な対応から生まれたもので、3・11以来、福島原発は最大の危機に直面しているのではありませんか。
事故から2年以上たっても、15万人を超える避難者の方々をはじめ被害者の生活と権利は回復していません。財物賠償を含め被害の全面賠償、生活再建にこそ尽力すべきではありませんか。
これらの問題の根本には、国の責任をあいまいにしたまま、東電を「絶対つぶさない」として国費で支え、全国の原発の再稼働と電気代値上げで原資を賄う原子力損害賠償支援機構のスキーム(枠組み)があります。
しかし、東電は昨年11月7日、賠償・除染等について「一企業のみの努力」では限界があるとして白旗を揚げました。既に実質国有化されている東電の事実上の破綻、原発の不良債権化は明らかです。
であるならば、原賠機構法を見直し、東電を特別な公的管理下におき、その経営責任、株主責任、貸し手責任を問い、メガバンクの債権放棄、利害関係者に対する負担を求める東電改革が、電力システム改革の出発点でなければなりません。
第三に、電力システム改革について
電力システム改革は、原発のような大規模集中型から再生可能エネルギーの爆発的普及、小規模分散・地域経済循環型システムへの転換でなければなりません。
福島事故は、安全神話とともに「原発が安い・クリーン・安定供給」という神話も崩壊させました。
本法案は、持株会社グループによる発送電の法的分離をすると言いますが、発送電一貫体制を実質的に維持したい電事連の要求通りにならない保証がどこにありますか。
また、本法案の基底をなすいわゆる“電力自由化”は、2000年代初頭の米国エンロン破綻事件、北米、カリフォルニア州の大停電を招いた市場原理主義、規制緩和の失敗とどう違うのか。
今求められているのは、こうした諸外国の経験を教訓にして、電力独占への民主的規制と国民的監視を強める電力民主化です。いまこそ「原発ゼロ」へ向かう電力改革を強く求め、質問を終わります。