政府の東京電力福島第1原発廃炉対策推進会議(議長、茂木敏充経済産業相)は6月10日、同原発1~4号機の廃炉工程の改訂に向けた「たたき台」を発表しました。号機によっては原子炉内に溶け落ちた燃料(燃料デブリ)の取り出しを1年半前倒しして実施するとした案を示しました。
従来の廃炉工程では事故時に運転中で燃料溶融から大量の放射性物質を放出した1~3号機全機について燃料デブリの取り出し開始を2021年度中としていました。「たたき台」では、号機によっては取り出し時期の開始を早めることができるとして、1、2号機については早ければ2020年度上半期中を目指すとしています。
今後、福島県など地元自治体や学識経験者などの意見を聴いた上で、月内にも正式決定するとしています。
しかし原子炉内の燃料デブリの状況は不明で、取り出しに必要な技術開発もこれから。実際に取り出しを早めることができるかは不透明です。取り出し方法としては、原子炉内に水を満たしたうえで実施するなどが考えられています。原子炉は圧力容器も格納容器も壊れて穴が開いているため、水を満たすには穴をふさぐ必要がありますが、どこに穴が開いているかもわかっていません。
ふさぐ工事を行う前には放射線量を低減する必要があります。これらに必要な遠隔操作ロボットの開発などはこれからです。
東電の10日の定例会見で尾野昌之原子力・立地本部長代理は、たたき台で示した前倒し案の実現の見通しについて「不確定要素はたくさんある」と述べました。
一方、汚染水については、地下水をくみ上げて海へ放出する「地下水バイパス計画」など従来の計画を示しただけ。敷地境界での被ばく線量を1年に1ミリシーベルト以下にするとしている点も、すでに汚染水タンクを増設したため、7・8ミリシーベルトという試算が示されていますが、抜本的な解決策は示されないままです。