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海近く 高濃度汚染・・福島第1原発地下水/ストロンチウム基準の30倍

東京電力は6月19日、福島第1原発(福島県大熊町、双葉町)の港湾近くで採取した地下水から、国が定める濃度限度を大きく上回る放射性物質のストロンチウム90とトリチウム(3重水素)を検出したと発表しました。検出された場所は、事故直後の一昨年(2011年)4月に高濃度放射能汚染水が海へ流出した場所の近くです。東電は、港湾内の海水中のストロンチウム90やトリチウムの濃度に特段の変化はみられないとするだけで、海へ流出した可能性を否定しませんでした。深刻な状況が今も続いていることを示しています。

ストロンチウム 基準の30倍

東電によると、港湾近くの3ヵ所に設置した観測孔で5月24日に採取した地下水を分析した結果、1、2号機のタービン建屋の間にある観測孔の地下水から1リットル当たりストロンチウム90が1000ベクレル、トリチウムが50万ベクレル検出されたといいます。国の定めた濃度限度はストロンチウム90が30ベクレル、トリチウムが6万ベクレルで、検出された値はそれぞれ約33倍と約8倍に相当します。トリチウムの濃度は5月31日に判明していましたが、東電はストロンチウム90の分析結果が出るまで、約3週間公表しませんでした。

港湾近くの観測孔は港湾内の海水中の放射性物質の濃度が低くならないため、その原因を探る目的で、昨年(2012年)11月から12月にかけてボーリングを行い設置したもの。昨年12月8日に採取した同じ観測孔の地下水からも1リットル当たりトリチウムが2万9000ベクレル検出されていました。東電は、そのときは大気中に放出され地表に落ちたトリチウムによるものと考えたとしています。

一昨年4月に発生した高濃度放射能汚染水の流出事故は、1~4号機の原子炉建屋やタービン建屋の地下にたまったものが、海側へ延びている地下のトンネルなどを通って流れ出したもの。東電は、流出した高濃度放射能汚染水に含まれていた放射性物質の量を4700テラ(兆)ベクレルだったと推定しています。

トンネルやそこから延びる管路には高濃度放射能汚染水が残っている可能性があるとみられることから、東電は、その水の調査や拡散を防ぐ方法を検討するとしています。

 

解説・・万全な流出対策を

東京電力福島第1原発1~4号機の原子炉建屋やタービン建屋の地下には、高濃度放射能汚染水がたまっています。1~3号機の原子炉内にある溶け落ちた燃料を冷やすためにかけ続けている水が燃料に含まれている放射性物質を溶かしながら地下へ流れ込んでいるからです。

その量は、原子炉建屋やタービン建屋の地下からたまり水を移送しているほかの建屋の分も合わせると約10万トン。1日当たり約400トンの地下水が原子炉建屋やタービン建屋の地下に流れ込んでいるため、高濃度放射能汚染水は急速に増え続け、福島第1原発の汚染水対策は危機的状況です。

高濃度放射能汚染水には今でも1立方センチ当たりストロンチウム90が数万ベクレル、セシウム134や同137がそれぞれ数千ベクレル含まれています。このような水が、外部、とりわけ海へ流出したりすることはあってはならないことです。ところが、東電は高濃度汚染水が地下水を汚染し海へ流れ込んでいないか監視するしくみを、昨年12月に港湾近くに観測孔を設置するまでつくっていませんでした。

観測孔も3ヵ所だけで、12月に1度地下水を採取した後、今年5月に再度行うまで汚染状況を調査していませんでした。このため、観測孔の地下水から高濃度のストロンチウム90やトリチウムが検出されたのはなぜなのか、それ以外の場所へも汚染が広がっているのか、海への流出はないのか、記者会見で問われても、はっきり答えられない状況です。

高濃度放射能汚染水がたまっている場所から漏れ出し、海へ流出することがないよう万全を期した取り組みが求められています。
(間宮利夫)

ストロンチウム90・・カルシウムに似た性質がある放射性物質で、半減期(放射能の量が半分になるのに要する期間)が約29年と長く、大量に取り込むと骨に蓄積され、がんなどを引き起こす恐れがあります。

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