原子力規制委員会は6月19日、原子炉等規制法の改定に伴う、地震・津波対策、重大事故への対策などを求めた新規制基準を決定しました。また原発の運転期間を最長で60年まで認める制度に関する政令案を了承。施行日を定めた政令は閣議決定を経て来月8日に施行予定です。
東京電力福島第1原発事故の原因究明が終わっていない中、審議過程で専門家から出された疑問や、多くの国民から寄せられた意見を全く無視し、拙速に決められた新基準は、原発の危険から国民の安全を保障するものとは程遠い内容です。
当初7月18日までに予定していた施行を早めるなど、原発輸出と再稼働に前のめりの安倍政権が掲げる「原発の活用」方針に沿って、再稼働ありきの基準となっています。
新規制基準では、炉心溶融を伴うような重大事故への対策を義務付けていますが、福島第1原発事故の教訓を踏まえた中身になっていません。
津波対策では新たに原発ごとに最も影響を及ぼす津波として「基準津波」を設定し、原発敷地内に浸水させない対策を求めています。
地震対策では、原発の真下に活断層の「露頭」(地表に露出した断層)がない地盤に設置するとしました。しかし、真下に活断層が走っていても「露頭」がなければ設置できることになります。
原発の運転期間を原則40年とし、1回の認可で最長20年まで延長を認める制度が導入されます。規制委は、延長の認可に「特別点検」を実施し、原発の現状を把握するよう求めています。
新基準で求める対策のうち、原発を操作する中央制御室が使えなくなった場合に備える「第2制御室」などの設置については5年の猶予が設けられました。
事故の際に格納容器で高まった圧力を、放射性物質を低減した上で外部に逃がす「フィルター付きベント」設備も、福島第1原発と同じ沸騰水型軽水炉は早期の整備を求めていますが、加圧水型軽水炉は5年間の猶予が設けられました。
新基準が施行されれば、複数の電力会社がただちに審査を申請すると表明しています。最も多い場合、関西電力高浜原発(福井県高浜町)など7原発の14基について、早ければ7月中の申請が予想されています。世論の前に再稼働できなかった、安倍政権と電力各社は、新基準をテコに再稼働をいっせいに進めようとしています。
7原発14基 来月にも申請
原子力規制委員会の新規制基準の7月施行に合わせ、電力各社は原発再稼働の前提となる審査を相次いで規制委に申請する見通しです。最も多い場合、関西電力高浜原発(福井県高浜町)や四国電力伊方原発(愛媛県伊方町)など7原発の14基について、早ければ7月中の申請が予想されます。電力各社は原発を早期に再稼働させたい考えです。
7月中の申請が確実視されるのは、高浜3、4号機や伊方3号機、九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)。北海道電力は泊原発(北海道泊村)1~3号機の全てについて申請する可能性があります。九電が玄海原発3、4号機(佐賀県玄海町)を加えることも想定されます。
国内の原発で唯一、稼働している関電大飯原発3、4号機(福井県おおい町)は、9月に定期検査に入ります。関電は検査後の再稼働をにらみ、7月にも同3、4号機の審査を申請する方向です。
東電は柏崎刈羽原発(新潟県柏崎市、刈羽村)7号機など2基を念頭に、新基準の施行直後にも申請できるよう準備を進めていますが、新潟県の泉田裕彦知事は再稼働に慎重な姿勢を崩していません。