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原発新基準(上)なぜ「立地審査指針」は取り入れられなかった・・既存原発の不適合恐れた?

原発再稼働の前提となる原子力規制委員会の新規制基準には、これまでの原発の審査に用いられた基本的な指針類の中で、万一の大きな事故に対しても周辺の住民に放射線障害を与えないことを求めている「立地審査指針」だけが取り入れられていません。既存の原発を存続させるためとの指摘がされています。

旧原子力安全委員会が原発の設置許可審査に関して定めたものに立地指針、安全設計指針、安全評価指針、線量目標値指針の基本的な指針がありました。原子力規制委員会によれば、このうち立地指針のみが新規制基準に取り入れられませんでした。

目安の4倍超える

立地指針は、大きな事故の場合に周辺の住民を放射線被ばくから守るために、原子炉の「位置」を住民から十分離すことを求めています。

東京電力福島第1原発の事故前までの実際の審査は、重大事故や仮想事故(技術的見地からは起こるとは考えられない事故)を想定しても原発敷地境界での全身被ばく量が、250ミリシーベルト以下になるかどうかを確認していました。

近年は、国際放射線防護委員会の勧告などから、より厳しい100ミリシーベルトで運用されていました。

東電による福島第1原発の設置変更許可申請では、3号機の仮想事故の場合、敷地境界での被ばく線量は、1・2ミリシーベルトでした。

しかし、今回の福島第1原発事故について、元原子力安全委員会事務局技術参与の滝谷紘一氏が調べたところ、1年間で1190ミリシーベルトに達しました。立地指針で目安とされる250ミリシーベルトの4倍を超えます。

事故反映させると

従来の重大事故、仮想事故が、格納容器の損傷を想定しておらず、また、放出される放射能で考慮されるのが希ガスとヨウ素だけでセシウムなどは評価の対象外だったからです。実際の福島第1原発事故では、格納容器が損傷し、希ガス、ヨウ素、セシウムを含む大量の放射性物質が放出されました。

滝谷氏は「福島第1原発事故の知見を反映した厳しい事故に対して新たに立地審査をおこなえば、既存の原発は不適合になる。そのために立地指針を取り入れなかったのではないか」と語ります。(つづく)

希ガス ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドンの総称。いずれも常温で気体。化学的に非常に安定で、他の元素と化合物を作りにくい性質があります。原発を運転するとクリプトン85やキセノン133などの放射性の希ガスも発生しますが、反応性に乏しいためフィルターなどではほとんど除去できません。

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