東京電力福島第1原発の汚染水タンクから大量の高濃度汚染水が漏れるなどのトラブルによって、試験操業延期など漁業者に深刻な事態が広がる中、全国漁業協同組合連合会(全漁連)は8月29日、東電の広瀬直己社長に強く抗議するとともに、政府と原子力規制庁に対して、国が主導する新しい枠組みで抜本対策をとるように申し入れました。
全漁連は都内で東電と会談。東電の広瀬社長は「あってはならないことが起き、大変申し訳ない」と陳謝し、「(漁業の)操業に影響を及ぼさないよう万全の対策を取る」と強調しました。
これに対し、全漁連の岸宏会長は申し入れ書を手渡しました。申し入れ書は「最も懸念した事態が相次いで発生した。もはや貴社の汚染水管理は破綻した」と指摘した上で、「将来の再開を心持ちにしている地元漁業者の失望は大きく、わが国の漁業の将来に計り知れない影響を与える」と表明しています。
岸会長は会談後、記者団に「水産物の値段が安定し始め、これから(本格復興)という矢先に汚染水が流れ、これまでの努力が無になった」と漁業者の苦境を訴えました。
この後、岸会長と福島、宮城、茨城、北海道の各漁連会長は、官邸で菅義偉官房長官に会い、「国があらゆる英知・技術・人材を結集し、汚染水管理についての抜本的な解決策を改めて構築し、その実行を主導する」よう要望しました。
また、原子力規制庁では山本哲也審議官と会い、「漁民の漁業再開に向けた努力を無にする事態に強い憤りを感じる」とのべ、汚染水を海に放出させることがないよう監督強化と、適切な情報発信を求めました。
山本審議官は、「汚染水漏れは本来あってはならない。東電監督を強化する」と述べました。