原発・核燃料サイクル施設が集中する青森県。国からの「電源3法交付金」の適用をうけない青森県内の25市町村に寄付という形で注ぎ込まれてきた電力業界からの巨額の“原子力マネー”が、来年度から打ち切りの見通しとなり“原発マネー”に縛られてきた地方政治が大きく破たんしはじめています。
(青森県・藤原朱通信員)
この原発マネーは、電力会社10社でつくる電気事業連合会(電事連)と日本原燃が、青森県の「むつ小川原地域・産業振興財団」(むつ財団)を経由し、県内の核燃料サイクル施設の立地・周辺地域以外の25市町村向けに「原子燃料サイクル事業推進特別対策事業」として、20年間注ぎ込まれてきました。これが県内各市町村の原発・核燃依存を強め、行政の在り方をゆがめてきました。
世論の批判
しかし、福島第1原発事故後へのまともな反省もなく電気料金を原資とする寄付金を投入するこれまでのやり方は、世論の批判が予想され継続できない事態となり、来年2014年度から打ち切りとなる可能性が高くなっています。
20年間続いた寄付金の総額は約130億円。助成件数は1284件(2012年度まで)に上ります。
また、寄付金が経由する「むつ財団」は、発足時に電事連が50億円の寄付金を出し、財団が銀行から借り入れた分の返済利息(毎年約2億円)を日本原燃に補填(ほてん)してもらっています。
日本共産党の吉俣洋県書記長は、「青森県は『むつ財団』を設立し、電力業界と一体となって原発マネーをばらまき、原発・核燃料サイクル政策に『モノいえぬ自治体』にしてきました。今回の(寄付金)打ち切りは、原発マネー路線のほころびを示したものです」と指摘しました。
本紙の問い合わせに対し、電事連と原燃の担当者はどちらも「相手があるためコメントは差し控える」との回答。県の担当者も、「電事連などからの正式な発表や、市町村会側からの報告もまだ入っていない」と述べるにとどめました。
先月28日に開催された市長会総会では、寄付金要請継続について協議されず、正式な継続の可否は決まっていませんでした。
しかし、地元紙の聞き取りに対して(6日付東奥日報)、青森市は「支援継続を希望しない」と態度を明確に示しましたが、16市町村が「継続希望」、他8市町村が「分からない」または「検討中」と回答しています。
この寄付金の事業は1994年から5年間の時限方式で実施され、今年が4クール目の最終年度です。これまで、五所川原市の「立佞武多(たちねぷた)」や田舎館(いなかだて)村の「田んぼアート」など、県内外にも広く知れ渡るお祭りやイベントの他、小学校などの公共施設の整備などにも活用されてきました。
頼らないで
議会で、この寄付金の予算計上に反対の声をあげてきた日本共産党の花田進五所川原市議は、9月議会でも寄付金継続の中止と寄付金に頼らない事業の継続を求める予定です。
諏訪益一党県議団長は、「いまこそ原発・核燃料サイクル政策からの撤退と安全・安心な自然エネルギー活用政策に転換し、これまで同様、地域振興策がとれるよう県と国が支援していく必要がある」と話しました。
【原子燃料サイクル事業推進特別対策事業の寄付金を受けてきた25市町村】
青森市、弘前市、八戸市、黒石市、五所川原市、つがる市、平川市
今別町、外ケ浜町、鯵ケ沢町、深浦町、藤崎町、大鰐町、板柳町、鶴田町、中泊町、三戸町、五戸町、田子町、南部町、階上町
蓬田村、西目屋村、田舎館村、新郷村