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福島原発事故15年 険しさ増す廃炉への道/燃料デブリ回収計画 大幅遅れ

福島第一原発構内。原子炉建屋の近くには「滞留水移送ライン 高線量注意」の表示=1月21日(代表撮影)

2011年3月の東京電力福島第1原発事故の発生から11日で、15年になります。東電は昨年、3号機からの高レベルの放射能を含む燃料デブリの本格的な取り出しについて早くても37年以降になるとの見通しを発表しました。当初計画より大幅な遅れですが、政府・東電は柏崎刈羽原発6号機(新潟県)の再稼働など原発推進へと危険な方向にかじを切っています。今、廃炉の見通しは――。(松沼環)

 今年1月に福島第1原発構内の合同取材に参加しました。

 1000基あまりある汚染水などをためた大型タンク群や、放射性物質を含む廃棄物が入ったコンテナ、汚染水を処理する多核種除去設備(アルプス)の入った工場のような白い建物などが並んでいます。かつては植え込みのあった斜面は雨水が地下にしみこまないようにモルタルなどでおおわれていました。

残る傷痕 高い線量

 高台から1~4号機を見渡しました。正面に見える1号機原子炉建屋は、直前に完成した放射性物質の飛散を防止するためのカバーが架かり、建屋上部のがれきは見えなくなっていました。

 東電は説明で、1号機のカバーがついたおかげでこの場所の放射線量がかなり落ちたと強調していましたが、近くの線量計は毎時36・1マイクロシーベルトを示していました。これは東京都内(毎時0・05マイクロシーベルト程度)と比べると700倍以上です。

 1~4号機原子炉建屋にはそれぞれ使用済み燃料プールからの核燃料取り出しのための設備などが設置されていて、事故時の爆発の痕跡は分かりづらくなっています。

 それでも15年前の事故のすさまじさはあちこちに見て取れます。かまぼこ形の装置を乗せた3号機の側面は、コンクリート壁の穴やそこからのぞくさびた鉄骨・鉄筋が見えます。

 原子炉建屋の近くを歩くと、建屋地下への地下水流入を防ぐ「凍土遮水壁」のための配管が何本も横たわっており、地上に見える配管にはもこもこした氷がこびりついていました。凍土遮水壁は試験的な運用から10年近くたっていますが、東電は、今のところ不具合の見つかった所を交換しながら使い続けると説明しています。

 建屋の上の方を眺めていると、足下に「滞留水移送ライン 高線量注意」の表示がありドキッとしました。

 2、3号機の間を通ると、事故後に造られた防潮堤が前面の視界を遮り海は見えません。事故初期に吹き付けられた青い飛散防止剤が今も建屋の壁に残り、近くの線量計は毎時56・4マイクロシーベルトを示していました。

合理的な目標なく

 一方、廃炉に向けた計画はいずれも大幅に遅れており、その困難さは顕著です。1号機カバーは当初計画から2年近く遅れての完成です。取材当日、カバーの屋根部が開けられ、作業が続けられていました。天井クレーンや換気設備などを取り付けるためといいます。計画では、プールの周りなどに残るがれきを撤去し、プール内の392体の燃料の取り出しを27~28年度に開始する予定です。

 2号機内にも615体の核燃料が残されています。2号機原子炉建屋の南隣には、構台上に前室が設けられています。昨年、使用済み核燃料を取り扱う設備が運び込まれ、今年6月までに取り出しを開始する予定です。

 4号機南側に建つプロセス主建屋と高温焼却炉建屋の地下には、事故当初、高濃度の放射能汚染水の移送先としてタンク代わりに使用されたことで、高線量の土のうが残っています。東電は昨年、回収作業が1年程度遅れると報告しています。

 1~3号機には、計880トンの燃料デブリが残されていると推測されています。

 3基のうち3号機を先行してデブリの大規模取り出しを予定していますが、東電は昨年7月、取り出しの開始時期が、12~15年後になると発表しました。政府と東電は、30年代初頭に開始することを目標にしていたことから大幅な遅れですが、一方で「51年までの廃炉完了」の目標は変えていません。

 東電は、調査や除染、干渉物の撤去、取り出しに必要な設備を上部に設置するほか、隣接する廃棄物処理建屋を解体・撤去するなど準備に時間がかかるとしています。

 東電は当初予定から3年程度遅れて一昨年、昨年と2号機から試験的に取り出した燃料デブリは計0・9グラムでした。1~3号機の全燃料デブリの10億分の1の量です。

 51年までに1、2号機も含めた燃料デブリ取り出しが完了することは不可能です。燃料デブリは強烈な放射能を含んでおり、作業員の被ばく管理を含めた安全な作業のためにも、合理的な目標を検討すべき時期に来ているのではないでしょうか。

 アルプスで処理した後に残る高濃度トリチウム(3重水素)を含む汚染水は23年8月から、海洋放出を開始しました。それに伴うタンクの解体はこれまでのところ13基です。26年2月26日までに海洋放出した汚染水13万トン強の約4割にあたる約5万2000トンの汚染水がこの間新たに発生しています。東電は、汚染水の発生低減の計画は示していますが、専門家らが提案している広域遮水壁など根本的な防止策には後ろ向きです。また、汚染水の処理で発生する放射能汚泥は現在、容器に入れて保管されていますが、最終的な処理方針は未定です。

いまこそ原発ゼロ

 廃炉を進めるには、取り出されたデブリや建屋の解体などに伴う放射能を含む大量の廃棄物をどう管理しするのか、処理・処分も検討しなくてはいけません。原子炉建屋などの老朽化とも対峙(たいじ)する必要もあります。

 事故発生から15年。廃炉までの道筋はいまだに見通せていません。にもかかわらず政府は、原発の最大限活用を掲げ、再稼働や老朽原発の延命、さらには原発の新増設まで推し進めようとしています。

 原発再稼働は事故リスクを高め、新たな核のごみを発生させ、再生可能エネルギーの拡大を阻害します。第二の福島原発事故を招かないために、いまこそ原発ゼロの日本にかじを切るべきです。

(「しんぶん赤旗」2026年3月10日より転載)