
新潟県の花角英世知事は、東京電力柏崎刈羽原発(新潟県柏崎市、刈羽村)6、7号機の再稼働を容認すると表明しました。県民意識調査の結果に触れ、原発の安全対策・防災対策についての「周知を継続して行うことで、再稼働に対する理解が広がっていくものと判断した」としています。しかし、その根拠は薄弱です。(松沼環)
県民意識調査は、4月県議会で否決された県民投票条例案に代わる「再稼働の判断の材料」として、新潟県が全県30市町村や同原発から30キロ圏内の9市町村を対象に実施したものです。
半数以上が否定的
全県を対象とした調査の結果では、同原発6、7号機について「再稼働の条件は現状で整っている」との問いに「そうは思わない」「どちらかといえばそうは思わない」と否定的な回答が計60%あり、「そう思う」「どちらかといえばそう思う」の計37%を大きく上回りました。
しかし、知事は会見で、県民意識調査から、同原発の安全・防災対策に関する「認知度が高くなるほど、再稼働に肯定的な意見が増える傾向が明らか」になったと説明しました。
同調査では、再稼働への意識だけでなく、安全・防災対策に関する知識や再稼働に伴う影響についての考えを質問しています。同調査を受託した野村総合研究所の報告書では、安全・防災対策に関する認知度と再稼働に対する意見の関係などを分析しており、知事の発言はこれに基づいたものです。
しかし、同調査のデータを見ると、全県対象の調査では、安全・防災対策それぞれの認知度が最も高いグループでも再稼働の条件が整っているかの問いに「そうは思わない」が「そう思う」を上回っており、その差は2倍以上。「どちらかといえば」と合わせると5割以上が否定的な答えです。(グラフ)
情報の提供により再稼働への理解が広がるという知事の主張は、再稼働に否定的な意見の原因が知識の少なさにあるという解釈につながります。しかし、調査結果からそのような解釈は成り立ちません。
誘導的な調査手法
また、県民意識調査そのものが、誘導的な調査手法だと批判されています。
例えば、安全対策の認知度に関する設問では、同原発の安全対策を写真入りで列挙して知っているかを質問。一方、テロ対策施設が未整備であることなど再稼働に不利な情報には触れられていません。また、防災対策の認知度に関する設問でも「訓練等を通じて連携を深めている」など、一方的な説明が並び、懸念されている避難計画の実効性に関する説明はありません。
調査が開始された9月に同県の市民団体が、調査対象や設問内容に偏りがあるとする抗議文を発表しています。今月23日には市民団体の原子力市民委員会(座長=大島堅一龍谷大学教授)が、声明で同調査について「社会調査や科学の基本的な作法から逸脱」していると指摘しています。
それでも同調査に、多くの県民が東電への不信や再稼働への不安を表明しています。知事の主張は、調査の結果を恣意(しい)的に解釈しており、再稼働容認の根拠にはなり得ません。知事は県民の不安にこそ応えるべきです。
(「しんぶん赤旗」2025年11月30日より転載)