
新潟県の花角英世知事が21日に東京電力柏崎刈羽原発の再稼働を容認したことについて、地元・柏崎市内に住み住民団体「原発問題住民運動柏崎刈羽」の会長を務める高橋優一(まさかず)さん(74)と、原発問題住民運動全国連絡センター代表委員の伊東達也さん(福島県いわき市在住)に話を聞きました。
今後も知事に断念迫る
原発問題住民運動柏崎刈羽会長 高橋優一さん
自宅は、原発から約9・2キロメートルの所にあります。私は、柏崎市内で生まれ育ち、名古屋で働いた後、ふるさとに戻って約44年ここに住んでいます。
知事が再稼働を了承したと聞いて、残念でなりません。県民の意見が大きく分かれていることを認識しているのなら、もっと時間をかけて検討してもいいのではないでしょうか。拙速な判断だと思います。
昨年の能登半島地震のときには、柏崎でも津波を恐れて逃げる住民で国道が大渋滞になり、通れなくなりました。もし原発事故が起きたときに、ちゃんと避難できるかどうか不安です。避難先が開示されていないことも不十分だと思います。
柏崎刈羽原発が2007年の中越沖地震で被災したとき、原発から煙が出ている状況が世界に報道されたのは衝撃的でした。私たちも自宅が被災し、ガスや水道、電気などが止まっている状況でしたが、原発で何が起こっているのか分からず、不安を感じていました。
2011年の福島第1原発事故は、まだ「緊急事態宣言」が解除されていません。事故はまだ続いているのです。今も自宅に帰ることができない人が多くいます。原発事故がいかに過酷かを思い知りました。知事は、この事故から何を教訓として学んだのですか。それを聞きたいです。
知事がゴーサインを出したからと言って、「ああ、そうですか」と引き下がることはしたくない。推進する側の“壁”は高く厚いと感じていますが、慎重な意見をもつ住民がたくさんいますので、今後も知事が断念するよう迫っていきたい。
原発の使用済み核燃料の処理技術も確立できていません。動かせば動かすほど悩ましい解決できない問題が出てくる原発が本当に必要なのか、全国のみなさんにも自分の問題として考えてほしいと思っています。
人も産業も壊滅的影響
原発問題住民運動全国連絡センター代表委員 伊東達也さん
知事は道理も正当性もない“許せない判断”をしたと言いたい。
福島第1原発事故から14年以上たちますが、避難指示区域では現在も5万人以上の住民が避難を続け、小中学生は事故前の2割程度しかいません。学者や専門家の調査では、多くの避難者がPTSD(心的外傷後ストレス障害)を患っているという報告もあります。
新潟はコメどころです。しかし、原発事故が起きればどうなるか。私が福島県の公表資料をもとに調べると、役場ごと避難した9町村のコメ生産量は、事故前の2010年度と比較して24年度でたった18%しか戻っていません。漁業も極めて深刻です。原発事故が起きれば、人も産業も壊滅的な影響を受けるのです。
東電は、再稼働と引き換えに新潟県に対し1000億円の資金拠出を示していますが、その資金を福島の除染や復興支援にこそ使えと言いたい。
私たちは国と東電に対し原発事故の責任を求めて裁判をたたかってきました。裁判の中で東電は「私たちだけに責任があるわけではない」などと無責任な言い分を主張し、真に反省していません。国も原発の最大限活用にかじを切り、このままでは「原発大事故、次も日本」になってしまいます。原発をなくすためにがんばりましょう。
(「しんぶん赤旗」2025年11月22日より転載)