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柏崎刈羽 再稼働は論外 これだけの理由/新潟知事が容認

東京電力柏崎刈羽原子力発電所6,7号機(手前から順に7,6号機)=2015年12月、新潟県

 新潟県の花角英世知事は東京電力柏崎刈羽原発(新潟県柏崎市、刈羽村)の再稼働を容認すると表明しました。しかし、福島第1原発事故を引き起こした東京電力は事故後も不祥事を繰り返しており、脆弱(ぜいじゃく)な地盤の上に立った柏崎刈羽原発は被災原発です。立地地域は豪雪地帯で住民避難はできるかなど多くの課題が山積しています。(松沼環)

不正続く東電

 東電は、今もなお数万人の人たちがふるさとを奪われ、避難を続けている福島第1原発事故を引き起こした当事者です。さらに多くの事故・損傷隠しなど、不正を繰り返しています。

 東電は内部告発に端を発した検査データの改ざん問題で2003年に、東電の柏崎刈羽と福島の2原発の全17基が停止する前代未聞の事態となりました。東電は07年にも大量のデータの改ざんが発覚し行政処分を受けています。

 同じ年に発生した新潟県中越沖地震では、想定していた最大の地震動を上回る揺れを観測し、柏崎刈羽原発全7基が停止。火災や放射能漏れ、膨大な機器・建屋の損傷など重大な事態に陥り、東電の火災対策の不備や情報公開の問題などが露呈しました。

 11年3月の福島第1原発事故では、事前に巨大津波のシミュレーションを実施しながらそれを公開せず、他電力会社の原発で実施していた水密化などの津波対策もせず対策を先延ばししました。無策のまま巨大津波に襲われ、世界最悪レベルの原発事故が発生。国会事故調報告書ではこの事故を「人災」と断定しています。

 第1原発では、事故後の対応でも作業員の被ばくや汚染水の漏えいなどが発生し、東電の下請け任せの姿勢が批判されました。東電は現在も汚染水を抜本的に減らす地下水流入対策を避け、汚染水の発生を許しています。

 柏崎刈羽原発では、テロ対策の設備不備が長期間放置されていたことが判明し、原子力規制委員会が21年4月に事実上の運転停止命令を出しました。規制委が商業原発に対してこのような厳しい措置をするのは、初めてでした。

 不正や不祥事が発覚するたびに、稼働・スケジュールありきで下請け・現場任せの東電の体質が批判され、東電は、再発防止を約束してきました。しかし問題は繰り返されています。先月東電は、6号機の稼働を前提に新潟県へ10年で1000億円を拠出する意向を表明しましたが、稼働ありきの姿勢を示すものです。

豆腐地盤の上

 東電が福島第1原発事故の当事者であるだけでなく、柏崎刈羽原発には立地など安全上の多くの問題があります。

 中越沖地震では2000ガル(ガルは加速度の単位)を超える強い揺れを観測。また、原発構内の広い範囲で液状化が発生しました。同原発は、「豆腐の上」に例えられるほど脆弱な地盤に立っています。このため、他の多くの原発と比べて同原発の想定する地震の揺れは極めて大きなものになっています。

 また、同原発は、日本でも特に地殻のひずみが大きいと推定されている地域に位置しており、繰り返し大きな地震の揺れに見舞われています。また、敷地内には何本もの断層が見つかっています。

 地下水位も高く、福島第1原発を大きく上回る地下水が流れ込むため、事故が起きれば大量の汚染水が発生する危険があります。

 同原発の30キロ圏内には、9市町村が含まれ、約41万6000人が暮らしています。

豪雪での避難

 原子力規制委員会が定めた原子力災害対策指針(原災指針)では、原発から5キロ圏内の住民は、原発事故が発生し周辺住民に放射線影響の恐れがある場合、被ばくを避けるために放射能が放出される前に予防的に避難することになっています。

 新潟県は日本でも有数の豪雪地帯です。新潟県の避難計画では、大雪で避難できない場合は、5キロ圏内の住民も被ばくを軽減するため屋内退避をするとされています。

 一方で、新潟県の行った被ばく線量シミュレーションでは、事故が発生しフィルターベント(排気)を使用した場合、屋内退避しても原発から5キロ圏内で国際原子力機関(IAEA)の基準値を上回るケースがありました。住民からは、被ばくを強いる計画と不安の声が上がっています。

 柏崎刈羽原発は、1~7号機合わせた総出力は821万2000キロワットで世界最大級の原発です。6、7号機は、いずれも出力135・6万キロワットと日本最大の原子炉で、事故を起こした場合の被害もそれだけ大きなものになり得ます。東電に危険な原発を動かす資格はありません。

東京電力柏崎刈羽原発を巡る動き

2011年3月  東日本大震災、福島第1原発事故が発生
  12年3月  6号機が定期検査入り。東京電力の原発が全て停止
  13年9月  原子力規制委員会に6、7号機の審査申請
  17年12月 6、7号機が審査に“合格”
  18年1月  外部からの侵入検知設備が故障。その後もテロ対策の不備続出
  21年4月  東電に事実上の運転禁止命令
  23年12月 規制委、禁止命令解除を決定
  24年4月  7号機に核燃料搬入
     6月  7号機の安全確認検査が終了と発表
     7月  国による県民説明会開催(8月まで)
     8月  東電、1~5号機の一部廃炉判断前倒しを表明
         柏崎市長、再稼働容認の意向示す
     12月 経済産業省が新潟県民向け説明会開催(25年2月まで)
  25年2月  政府、原発の最大限活用をうたったエネルギー基本計画を閣議決定
         7号機テロ対策施設の完成目標を29年8月に延期
     4月  新潟県議会、再稼働の是非を問う県民投票条例案を否決
     6月  6号機への核燃料搬入完了。東電が6号機の再稼働優先を表明
         県民から再稼働についての意見を聴く公聴会開催(8月まで)
     10月 東電が1、2号機廃炉に向けた検討入りなど表明
         6号機の安全確認検査が終了と発表
     11月11日 近隣市町村の住民意識調査の結果が出そろう
        12日 花角英世知事、柏崎市長らと会談
        14日 知事が現地視察。30キロ圏内の7市町トップと意見交換
        18日 知事、福島第1原発を視察
        21日 知事、再稼働容認を表明

(「しんぶん赤旗」2025年11月22日より転載)