きょうの潮流

 県民に信を問う―。再三、口にしてきた言葉はどこにいったのか。首長としての公約は偽りだったのか。これは有権者を裏切ったことにならないのか▼「脱原発の社会をめざします」。最初の県知事選のとき、地元紙に出した全面広告にはこう大書されていました。さらに「再稼働の議論はしません」とも。3年前の知事選でも再稼働への賛否は示さず、検証を尽くすと▼花角英世・新潟県知事が、柏崎刈羽原発の再稼働を認めると表明しました。信を問うことも、公約と相反しても、まともな検証もしないで。県の意識調査でも再稼働を心配する声が多くを占め、今年の参院選時に地元紙が実施したアンケートでは反対が上回っていたにもかかわらず▼燃料漏れや火災、検査データの改ざん…。トラブルや不正続きの柏崎刈羽原発。しかも地盤はもろく、敷地内には何本もの断層が見つかり実際に地震の影響もうけています。災害時の避難計画も現実的ではないと批判されています▼福島第1原発を視察した花角知事は「二度と起こしてはならない事故だと実感した」と口にしました。14年が過ぎても、いまだ事故は収束せず、ふるさとを追われた多くの人々。しかも、東京電力も政府も、だれも責任をとらないまま。その現状をふまえてなお検証は終わったと▼再稼働となれば、福島の事故後に東電が初めて原発運転を再開することになります。世界最大級の原発を電力会社も政府も無責任なまま動かす。それが知事のめざす脱原発の社会なのか。

(「しんぶん赤旗」2025年11月21日より転載)