国の中長期のエネルギー政策の方向性を示すエネルギー基本計画の見直しに向けて原発問題を検討する経済産業省の審議会「原子力小委員会」が20日開かれ、原発の新増設などのための「事業環境整備」が必要だと議論しました。一方で「原発は国の支援や国民負担がないと前へ進めないことがはっきりした」と批判する意見もありました。
委員会では電力会社のシンクタンク電力中央研究所は海外の事例を報告。英国など原発の新増設を進めてきた欧米各国では、巨額の初期投資が求められるなどの経済リスクがあるなかで、需要家や国がリスクを分担して費用回収や資金調達を行いやすくする事業環境整備に取り組んできたことを紹介しました。
電気事業連合会は、2040年以降に原発の設備容量が減少するとして、20年という建設にかかる時間を踏まえれば、新増設の開発・建設の速やかな着手が必要だと強調。また、電気事業者には資金調達環境の悪化などの課題があるなか、投資・コスト回収の予見性を確保するなど「事業環境整備が急務」だとして、その検討を求めました。
原発推進の委員からは「リプレース(建て替え)や新増設の計画そのものがはっきり見えていない。早急に炉の開発目標を示すときではないか」「ばく大な金額が必要となる今後の資金調達に関する政府によるサポートが重要」などの意見がありました。一方、原子力資料情報室事務局長の松久保肇氏は「原発には経済性がなく、国の支援や国民負担がないと前へ進められない電源だとはっきりした」と指摘しました。
(「しんぶん赤旗」2024年8月21日より転載)