福島第1原発で世界最悪レベルの事故を起こした東京電力が再び原発を稼働しようと動いています。東電が新潟県・柏崎刈羽原発7号機原子炉に核燃料を装填(そうてん)し、原子炉起動に向けた使用前検査を進めています。
同原発は、テロ対策の不備を理由に原子力規制委員会から核燃料の移動を禁じられていました。昨年12月に禁止命令が解除されたことから、東電は、地元同意の見通しがないまま核燃料装填にふみきりました。既成事実を積み上げて再稼働へと突き進もうという執念は軽視できません。
■政府が強く後押し
今年3月には、東電から今後の対応方針について報告を受けた斎藤健経産相が、花角英世新潟県知事、桜井雅浩柏崎市長、品田宏夫刈羽村長に電話で再稼働への理解を求めました。資源エネルギー庁長官らも現地に出向きました。
政府と東電が一体となって再稼働への動きを強めていることは重大です。福島原発の事故も被害も終わりが見えないもとで、東電が原発を再稼働させることは許せません。県民、国民の大きな世論と運動で政府と東電の動きをはね返す必要があります。
原発回帰に舵(かじ)を切った岸田文雄政権は「GX実現に向けた基本方針」(2023年2月閣議決定)で、「国が前面に立って」環境整備に取り組み再稼働を進めると宣言し、経産省幹部が足しげく新潟県に通うなど柏崎刈羽原発の再稼働を強力に後押ししてきました。
テロ対策の不備や不正が相次ぐ東電への不信は根深いうえ、住民の間には能登半島地震で地震による原発事故への不安が強まっています。東電による住民説明会では避難路や屋内退避などへの不安の声が多く出されました。住民の思いを無視して再稼働に突き進む政府と東電の姿勢には新潟県内の首長からも懸念の声が出されています。
新潟県は、福島原発事故の原因、健康と避難生活への影響、避難方法の「三つの検証」を行い、多くの課題が示されました。
花角知事は「三つの検証が終わるまで再稼働の議論はしない」「再稼働の是非は県民に信を問う」と公約してきたこともあり、柏崎刈羽原発の再稼働について態度を明らかにしていません。しかし知事は昨年、検証総括委員会を廃止し、「三つの検証」の幕引きを図りました。予断を許さない状況です。再稼働の是非を議論するうえで、福島原発事故の検証は不可欠です。「三つの検証」をあいまいにせず、県民的な議論を行うべきです。
■地震国という危険
能登半島地震では、北陸電力志賀原発(石川県)で変圧器が壊れて外部電源の一部を失うなど深刻なトラブルが続出しました。現行の避難計画が机上の空論であることも浮き彫りになりました。道路が寸断されれば逃げられず、家が壊れれば屋内退避もできません。
日本は世界有数の地震・津波国です。福島原発事故でも能登半島地震でも明らかなように、日本で原発を稼働させることはあまりにも危険です。日本社会の現在と将来のために、原発回帰の自民党政治を終わらせ、原発ゼロの日本をつくりましょう。
(「しんぶん赤旗」2024年4月27日より転載)