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主張 核のゴミ処分場/超長期の危険を押し付けるな

 原発の運転で生じる高レベル放射性廃棄物(核のゴミ)の最終処分場の候補地選定のため、北海道の寿都(すっつ)町、神恵内(かもえない)村を対象に行っていた「文献調査」の報告書案を原子力発電環境整備機構(NUMO)が公表しました(13日)。次の段階である、地質調査などを行う「概要調査」にすすむ候補地が両町村には存在するとしています。経済産業省の審議会で数回の議論を経て、報告書を正式決定しようとしています。

道知事は反対を表明

 処分場の選定は、文献、概要、精密の3段階で20年程度かけて行われることになっています。

 核のゴミは強い放射能をもち、万年単位の管理が必要とされます。政府は、専用の金属容器に入れて地下深く埋設処分するとしています。しかし日本は、四つのプレートがぶつかり合う地域にあり世界有数の地震国です。地下水も豊富で、核のゴミの金属容器の腐食は避けられず、放射性物質が地下水に漏れ出すことが懸念されます。

 両地域とも岩盤がもろく地層処分に適さないとする専門家もいます。昨年10月には、300人を超える地球科学の研究者らが、長期にわたる地殻変動を予測し「安定した場所を具体的に選定することは、現状では不可能」だという声明を発表しました。政府の依頼に応えて日本学術会議が出した「回答」(2012年)も、「万年単位に及ぶ超長期にわたって安定した地層を確認することに対して、現在の科学的知識と技術的能力では限界があることを明確に自覚する必要がある」としています。

 政府は、文献調査を受け入れれば最大20億円、概要調査なら最大70億円という交付金を設けて、最終処分場立地への流れをつくろうとしてきましたが、これまで文献調査に応じたのは寿都町、神恵内村のみです。鈴木直道・知事は、概要調査への移行に反対の意向を表明しています。地元首長が反対すれば概要調査にはすすめません。北海道には、高レベル放射性廃棄物の持ち込みを「受け入れ難い」とする条例もあります。住民や漁協などは、文献調査の段階から反対の声を上げています。

 原発回帰にかじを切った岸田文雄政権は昨年4月、最終処分場の実現に「政府一丸」で取り組む方針を決めました。しかし、このような超長期の危険を政府が自治体に押し付けることがあってはなりません。日本で原発が動きだして半世紀以上たちますが、核のゴミ処分のめどは立っていません。見通しのないまま原発をすすめてきた責任を棚上げして、処分場立地につきすすむことは許されません。

 政府と電力会社の責任で、使用済み核燃料を含め既存の核のゴミを厳重に管理しつつ、既定路線にこだわらず処分方法の研究をすすめるべきです。

再エネ優先への転換を

 原発を使い続ければ、処分困難な核のゴミが増え、問題は一層深刻になります。原発廃止を決断すべきです。

 原発をやめれば、電力の2割を担っている再生可能エネルギーをさらに伸ばすことができます。原発が優先され再エネ発電が抑えられているからです。

 今年はエネルギー基本計画見直しが予定されています。国民の世論と運動で省エネ・再エネ優先へと政治を転換させましょう。

(「しんぶん赤旗」2024年2月29日より転載)