きょうの潮流

 原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分地選定に向けた「文献調査」をした北海道の2町村の報告書原案が公表されました。科学論文や地質調査のデータなどをもとに、活断層や火山など処分場を設置するのに適さない性質がないかを確認する第1段階の調査結果です▼それによると、神恵内(かもえない)村は、大部分が周辺の火山から15キロ圏内にあるにもかかわらず、現地でボーリングなどを行う次の段階の「概要調査」に進むことが可能だといいます。寿都(すっつ)町も断層など今後の調査で「留意すべき」項目があるものの、同様に可能だと▼日本で核のごみは、原発の使用済み核燃料からプルトニウムやウランを回収し、残った廃液にガラスを混ぜた「ガラス固化体」のこと。20秒で致死量に達する高い放射線を出し、人間の生活環境から10万年程度の隔離が必要です。このため政府は地下300メートルより深い地層に埋める「地層処分」する方針▼原案に対し、地球科学の専門家や市民団体から「地層処分には不適であることを示す多くの科学的論文があるにもかかわらず、無視している」と指摘されています▼能登半島地震で得られつつある最新の知見に全く触れていないのは「言語道断だ」とも。地球科学の研究者ら300人が昨秋、「世界最大級の変動帯の日本に、地層処分の適地はない」とする声明も発表しています▼岸田政権は再稼働や老朽原発の運転延長など原発回帰を進める方針です。これ以上核のごみを増やす原発頼みをやめるべきです。

(「しんぶん赤旗」2024年2月23日より転載)