東京電力福島第1原発事故で福島県から山形県に避難した住民669人が、国と東電に総額約20億4600万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が17日、仙台高裁(石栗正子裁判長)でありました。石栗裁判長は、国が規制権限を行使して東電に津波対策を義務づけても「事故を回避することができなかった可能性が高い」として、一審の山形地裁判決(2019年)に続いて、国の責任を認めませんでした。
また、東電に対し、およそ350人に慰謝料計約6095万円を賠償するよう命じました。
同種の集団訴訟で国の責任を認めなかった22年6月の最高裁判決後、国の責任を判断した高裁判決は5件目。いずれも国の責任を認めませんでした。
仙台高裁判決は、02年に国の機関が公表した地震予測「長期評価」について、「原子力規制において検討すべき知見であった」とする一方で、「その切迫性、ないし想定される事態の具体性の点で劣るもの」で、「予見可能性の程度も相応に低いもの」と指摘。
その上で、事故を招いた11年3月の津波は、長期評価にもとづき高さ15・7メートルの津波が襲来するとの試算結果をはるかに上回る規模だったとして、試算津波を前提にした対策では「被害を回避できなかった可能性が高い」と結論づけています。
原告の9割以上が避難指示区域外の避難者です。判決は22年12月に決定された、原子力損害の範囲などを示した「中間指針第5次追補」について「合理性を有する」などとして、その考え方を参考に精神的損害を判断しています。
判決後の会見で、弁護団の安部敏団長は国の責任が認められなかったことについて「残念な内容。最高裁判決に近い考え方が示された」と述べました。
外塚功事務局長は「国の責任を引き続き求めたい」と上告の意向を示しました。また、賠償額について「大変きびしい内容。(裁判所の最近の判断で)慰謝料額が低額化している流れを仙台高裁が強めた」と指摘しました。
一審では、東電に対し原告5人にのみ、計約44万円の支払いを命じました。
(「しんぶん赤旗」2024年1月18日より転載)