岸田文雄首相は能登半島地震後、2週間たった14日、初めて被災地を駆け足で訪問しました。テレビはその模様を伝えましたが、驚いたのは、今回の地震で北陸電力志賀(しか)原発(石川県志賀町)は変圧器が破損して油が漏れ、外部電源が一部使えなくなるなど深刻なトラブルが相次いだのに、首相は帰京前、記者団に原発再稼働の「政府方針はまったく変わらない」と述べたことです。地震で明らかになった原発の危険性をみているのか。
14日のTBS系「サンデーモーニング」は、「志賀原発でトラブルも」とパネルを使って、「“想定を上回る”揺れ」「敷地に亀裂も」「一部の変圧器が壊れ、約2万リットルの油漏れ」と紹介。コメントを求められた毎日新聞の元村有希子論説委員は、「“想定を超える”という福島の時に何度も聞かされたような言葉がたびたび出てきています。しかも、北陸電力が発表のたびに被害の程度が大きくなるという情報公開に大変な課題を残している」としたうえで、「こうしたことを“想定外でした。でも、今回は運よく大丈夫でした”では、住民は安心できない」と強調しました。
元村さんは、さらに活断層の長さが北陸電力の想定する約100キロを超えて、約150キロの断層が動いたと言われていることにふれ、「つまり、原発を建てるときに想定した以上に地殻変動が激しいかもしれないと言えるわけです。そんななかで、今まで通りに(再稼働に向けた)安全審査を進めていいのか。日本海側には七つの原発がある。柏崎(刈羽)から島根まで。それが“今まで通り大丈夫ですよ。稼働してください”でいいのかと素朴に疑問に感じます」と語りました。
今回、事故時の避難計画の非現実性も証明されました。地震発生直後、テレビは「安全上の問題は確認されていない」という政府や北陸電力の発表をそのまま伝えてきましたが、住民の不安にこたえるには廃炉しかありません。報道姿勢が問われています。(藤沢忠明)
(「しんぶん赤旗」2024年1月17日より転載)