福島第1原発事故を引き起こした東京電力が、事故直後の2011年4月から13年6月までに、長期・短期の借り入れをしている銀行などに累計824億円もの利息を支払っていたことが、日本共産党の塩川鉄也衆院議員と本紙の調べで、9日までにわかりました。東電は、原発事故による被災者への賠償金は出し渋る一方で、貸し手責任があるメガバンク(巨大銀行)などには利息まで支払い続けています。
東電広報部によれば、11年4月以降、13年6月までの長期借入金の返済額は4365億円、支払い利息は783億円。短期借入金の返済額は2兆1432億円、支払い利息は41億円です。
また同期間の社債(国内・海外)の償還額は1兆4900億円、支払い利息1915億円。長期・短期借入金と社債の支払い利息の合計は2739億円にものぼります。そもそも東電は国からの1兆円の出資と原子力損害賠償支援機構からの資金援助で“延命”されています。資金援助額は3兆483億円。支払い利息の合計2739億円は、資金援助額の1割弱に相当する額です。
東電は事故直後の11年6月、全金融機関に対して送付した支援要請文書に「貴社との取引において金利減免や債権放棄といった類(たぐい)の支援を、当社から要請することはないと申し添えます」との文言が記載されていたことがすでに明らかになっています。
大株主でもあるメガバンクは、巨額の金融債権をもち、もうけてきました。なぜ、東電は三井住友銀行、みずほ銀行、三菱東京UFJなどの金融機関に対し、金利減免や債権放棄などを求めないのか。東電広報部は「国と一緒になってつくった『総合特別事業計画』のなかでは、金利減免や債権放棄をお願いする内容となっていない」と説明します。
東電広報部によれば、6月末現在の残高は長期借入金3兆3847億円、短期借入金95億円、国内社債4兆1202億円、海外社債1594億円となっています。「メガバンク3行の占める割合は?」との本紙の問い合わせに対し、「個別の契約にかかわるために回答を差し控えさせていただく」としています。
株主や金融機関責任を果たして・・大阪市立大学大学院経営学研究科教授(環境政策論)の除本理史(よけもとまさふみ)さんの話
今回の事故では、被害補償の責任と費用負担の実態にあいまいさがみられます。東電は形の上では被害者に補償を支払っているようにみえますが、その原資は国からでており、電気料金や税金を通じて国民に転嫁されていきます。東電の株主や、金融機関が責任をきちんと果たすことが大事だと思います。
もはや東電には当事者能力なし・・塩川鉄也議員の話
もはや東電に当事者能力がないことは明白です。東電を破たん処理し、利害関係者であるメガバンクに責任と負担を求め、その上で、国が事故収束と賠償・除染に全面的に責任を果たす体制に改めることが必要です。