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原発事故 国の責任焦点/いわき市民訴訟控訴審あす判決

仙台高裁

 東京電力福島第1原発事故で、福島県いわき市に居住していた住民1339人が東電と国に13億5200万円余の損害賠償と原状回復などを求めた「いわき市民訴訟」(伊東達也原告団長)の控訴審判決が10日、仙台高裁(小林久起裁判長)であります。同種の集団訴訟で国の責任を認めなかった昨年6月17日の最高裁判決後、最初の高裁判決として注目されます。

 同訴訟の原告は、強制避難指示が出ていない「自主的避難等対象区域」(原子力損害賠償紛争審査会の指針で定めた区域)の住民。2021年3月の一審判決は、国の規制権限不行使は「違法」と断じました。一方、屋内退避区域の住民の損害を11年12月末まで、それ以外の住民の損害を同年9月末までしか認めませんでした。原告、被告双方が控訴し、控訴審の弁論は昨年3月から4回あり、11月で結審しました。

 主な争点の一つは、最高裁判決の判断をめぐってのものです。

 最高裁判決は、国の機関が02年に公表した地震予測「長期評価」に基づく津波対策を国が東電に取らせたとしても「同様の事故が発生しなかったであろうという関係を認めることはできない」と、危険の切迫性にかかわる予見可能性などの判断は示さず、国の責任を否定しました。津波対策では防潮堤が基本だとしました。

 原告側は、4年以上かかる防潮堤に先行して、建屋の浸水を防ぐ「水密化」措置を検討すべきだったのに、最高裁がその点を判断しなかったと指摘。規制権限の行使に際し、調査検討を尽くしていれば水密化措置が採用され、事故は回避可能だったと主張しました。

 国側は、水密化措置は当時考え難かったなどといい、最高裁判決の判断は国の主張と考え方が同じだとしています。

 損害をめぐっては、原告側は、一審判決の被害の終期の判断は短すぎると主張。これに対し東電は、自主賠償基準を超える慰謝料を認定した一審判決は不当だとしています。

(「しんぶん赤旗」2023年3月9日より転載)