エネルギーに関する基本的な政策を審議する経済産業省の「総合資源エネルギー調査会基本政策分科会」が16日開かれ、原発の建て替え推進や60年超の運転延長などを盛り込んだ「エネルギー安定確保に向けた内容」案を取りまとめました。来週にも開かれる「GX(グリーントランスフォーメーション)実行会議」(議長・岸田文雄首相)で報告され、決定される見通し。
2011年3月の東京電力福島第1原発事故をへて、政府はこれまで「可能な限り原発依存度を低減する」とうたい、新増設や建て替えは「想定していない」としていましたが、それを明確に転換する内容です。岸田首相が8月に検討を指示してからわずか4カ月。政府はこれまでの原発政策を大きく変える内容を原発容認・推進が多い審議会の議論だけで進めてきました。
取りまとめ案は、「原則40年、最大60年」という現行の原発の運転期間の制限規定を変更。「原則40年、最大60年」の制限を設けた上で、この運転期間から、新規制基準に基づく審査などによる停止期間を除き60年以上の運転が可能になります。
この実施に向け経産省は法的措置を検討しており、来年の通常国会に関連法案の提出をねらっています。
同案はまた、原発の「開発・建設を推進する」と明記。「まずは廃止を決定した炉」を対象に建て替えを具体化するとしています。
同案は、昨年10月に閣議決定された「第6次エネルギー基本計画の方針の範囲内のもの」としています。
しかし、基本計画には、原子力について「可能な限り原発依存度を低減する」としていました。委員の村上千里・日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会理事は「政府の解釈と市民の解釈に大きな隔たりがあることを示している」と指摘。建て替え推進や運転延長は「拙速に答えを出すのでなく」、1年程度の時間をかけた国民的議論を求めました。
(「しんぶん赤旗」2022年12月17日より転載)