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東電に一審の倍 賠償命令・・南相馬訴訟控訴審判決 「経営優先し原発事故」

「東電の悪質性を認定」などの幕を掲げる福島原発避難者相馬訴訟の弁護団ら=25日、仙台市

仙台高裁

 東京電力福島第1原発事故で避難を余儀なくされ故郷の変容を強いられたとして、福島県南相馬市原町区の住民140人が東電に対し損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が25日、仙台高裁(小林久起裁判長)でありました。小林裁判長は東電に、一審を約1億3000万円上回る約2億7900万円の支払いを命じました。

 同裁判長は東電の対応について「経営上の判断を優先させ」「結果回避を怠り深刻な原発事故を発生させた重大な責任がある」と厳しく指弾し、慰謝料の増額要素にしました。

 原告は福島第1原発から半径20キロ圏内の避難指示解除準備区域に居住した17世帯と、同20キロ圏外で30キロ圏内の緊急時避難準備区域の27世帯の住民。

 判決理由で小林裁判長は、東電は2002年7月に政府の機関が地震予測「長期評価」を公表した頃にはマグニチュード8クラスの大地震発生の可能性を認識し、事故の3年前の08年には「長期評価」に基づく試算を得て「事故原因となった津波の大きさを超える津波が到来する可能性を認識していた」と判断。しかし、対策完了までに運転停止を求められることによる収支悪化を避けたいとの判断で、対策先送りを決めたと指摘。

 この東電の対応は「経営上の判断を優先させ、原発事故を未然に防止すべき原子力事業者の責務を自覚せず、結果回避措置を怠った重大な責任があった」と批判しています。

 判決では、新しく避難を余儀なくされた慰謝料、避難生活の継続による慰謝料、故郷の変容による慰謝料の三つが認定されました。

 また、東電が慰謝料算定に際し、原告らの個別の事情を主張したのに対し、判決は「地域から避難し、避難生活を継続し、地域の共同生活が失われた原因は、津波ではなく原発事故にあった」と判断。一審で請求が棄却された、津波で被災した地区の原告にも三つの慰謝料を認めました。

 原告の小林五月さん(67)は「前へ進んだ。今度は国の責任を認めさせることだ」と語り、佐藤妙子さん(70)は「事故が予測されていたことだったと認められたことがよかった」と話しました。

(「しんぶん赤旗」2022年11月26日より転載)