故郷失う教訓 風化させない
東電福島第1原発事故から11年半余。原発ゼロを求め、再稼働に反対する運動が全国で続いています。岸田政権が「脱炭素」やエネルギー危機を口実に再稼働や新増設に言及するもと、「事故の教訓を風化させない」「原発なくせ」と声をあげ続ける各地の運動を追いました。(鈴木平人)
首都圏と関西圏の大動脈を結ぶ静岡県。静岡市から南に約45キロに位置する御前崎市に、「世界一危険」と評される浜岡原発を抱えます。県内では静岡市、浜松市、掛川市で毎週金曜に定例行動が行われ、500回を超える地域もあるほか、焼津市、藤枝市、島田市、沼津市、裾野市、伊豆半島にも地域組織があるなど、自治体ごとに運動が定着。それぞれの会がつながり脱原発のネットワークをつくっています。
福島より深刻に
13日には、静岡市で「浜岡原発の再稼働を許さない!!ひまわり集会」が行われ、雨の中400人が集まりました。コロナで3年ぶりの開催です。
集会では、県内各地で運動を続ける団体の代表や、映画監督、福島からの避難者らが相次いで発言。御前崎で活動する渡邊久次さんは、「事故が起これば90万人以上が避難対象となる。安全性を考えれば廃炉しかない」と訴え。伊豆半島で活動する小林弘次さんは、「一度事故が起これば故郷が失われる。福島の事故は終わっていない。今こそ原発のない社会を」と述べました。
集会に参加した保育士の増田由美さん(52)は「危険なことが分かっている原発を動かすことが信じられない。金もうけできればいいのか」と批判します。
実行委員長の林克さんは、「浜岡原発は周辺人口が多く、事故が起きれば被害は福島よりも深刻になる。新増設や運転期間の延長を言い募る岸田政権に対して、再稼働反対だけでなく廃炉に向けた運動を大きくしていきたい」と意気込みます。
再生エネ普及を
気候危機のもとで、再生可能エネルギーの普及、省エネ推進を求める声も広がっています。
「原発をなくす静岡の会」の酒井政和事務局長は、「政府はウクライナ侵略やエネルギー危機を口実に再稼働をあおっているが、これから先、社会がどういうエネルギーで支えられるべきか考えるときだ」と語ります。
浜松市で2012年から金曜行動を続けてきた疋田朋広さん(54)も、「エネルギーも地産地消を実現する方が効率がいい。原発などの大規模発電はそうした動きにも逆行する」と指摘します。
酒井さんは語ります。「エネルギー問題は一度決めれば数十年は計画に従うことになる。冷静な議論のためにも、全国の原発をなくすためにも、原発立地県として浜岡原発を止め続けたい」
(「しんぶん赤旗」2022年11月25日より転載)