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米比、原発協力へ合意・・インド太平洋規模でも推進

フィリピンのルノン島西側にある未稼働のバターン原発(ロイター)

「地震国に時限爆弾のよう」と批判

 【ハノイ=面川誠】フィリピンと米国が原発推進で協力を進めようとしています。ブリンケン米国務長官は6日、フィリピンでマルコス同国大統領と協力に合意し、ブリンケン氏は2国間だけでなく「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」でも推進する意向を表明しました。

 ブリンケン氏はマルコス氏との会談後の記者会見で、「クリーンエネルギー、とりわけ原子力エネルギー」とを挙げ、「協力・強化を具体化することで合意した」と表明。「2国間および米国主導のIPEFの枠内で行う」と言明しました。

 IPEFは、5月に訪日したバイデン米大統領が中国への対抗を念頭に、立ち上げるためのプロセス開始を発表したものです。米国、オーストラリア、ブルネイ、フィジー、インド、インドネシア、日本、韓国、マレーシア、ニュージーランド、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナムの14カ国が創設メンバーです。

 フィリピンのロムアルデス駐米大使は8日にフィリピンのテレビ番組で、米国の小型原発メーカーであるニュースケール・パワー社がフィリピンのエネルギー開発企業と協力を開始したことを明らかにしました。

 現在は従来の原子炉より発電の出力が小さい小型モジュール炉を検討し、1984年にほぼ完成したまま未稼働になっているバターン原発の活用は計画に入っていないとしています。

 フィリピンのドゥテルテ前大統領は2月、石炭火力発電所の段階的廃止の過程で、エネルギー源に原発を含めるとする大統領令に署名。マルコス氏もこの方針を引き継ぎ、7月25日の施政方針演説で「新しい原発を建設しなければならない。特に再生可能エネルギーの分野で、利用可能なあらゆる最上の技術を活用しなければならない」と強調しました。

 フィリピンは世界有数の地震国。フィリピン政府が1986年にバターン原発の稼働計画を中止したのは、付近に火山と活断層があるという安全性への懸念からでした。

 環境団体「気候正義のためのフィリピン行動」は「台風や地震が絶え間なく続くフィリピンに原発を建設することは、時限爆弾をつくるようなものだ。安全な処分ができない放射性廃棄物は言うまでもない」と批判し、原発推進の撤回を求めています。

(「しんぶん赤旗」2022年8月14日より転載)