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主張 関電元役員の疑惑・・「原発マネー」の闇に切り込め

 多額の金品受領を機に発覚した関西電力元幹部の不正で、大阪第2検察審査会が前・元会長ら3人は「起訴相当」、他の幹部6人は「不起訴不当」と議決しました。疑惑を捜査した大阪地検特捜部が昨年11月、元幹部9人を嫌疑不十分で不起訴にしたことに対し、市民から選ばれた検察審査会が検察の処分に正面から異議を唱えたものです。検察は再捜査にあたることになります。一連の疑惑は、原発立地や再稼働をめぐり巨額の資金が動いたことと結びついています。国策にかかわる闇にメスを入れることが必要です。

電気料金を懐に入れた

 疑惑は2019年に明らかになりました。関電の当時の八木誠会長らが、関電高浜原発のある福井県高浜町の元助役・森山栄治氏(故人)から現金や商品券、スーツ仕立券などを長期にわたり受け取っていました。同社の調査(20年)では金品受領者は83人、総額約3億7000万円相当にのぼりました。元助役の関連会社に原発関連工事受注の便宜が図られていた疑いなどが大問題になりました。

 調査の中で、役員報酬の一部を関電が補填(ほてん)していたことも判明しました。11年の東日本大震災の後の電気料金値上げの際に役員は報酬を一部減額しましたが、退任後に嘱託報酬などを名目に減額分を支払っていました。金品受領で生じた役員個人の追加納税分も会社が補填していました。

 市民団体は関電元幹部9人を会社法違反(特別背任)や業務上横領などの疑いで告発し、検察の不起訴処分に対しては今年1月、検察審に審査を申し立てていました。

 検察審が八木前会長ら3人を「起訴相当」としたのは、追加納税分の補填などは「横領罪が十分成立し得る」と判断したためです。自らの立場を利用し、秘密裏に多額の補填をし、口止めまでしていたことを厳しく批判しました。

 「不起訴不当」と判断したのは、金品授受などについてです。元助役側が、原子力部門の経歴が長い元副社長に「通常の市民感覚からすれば考えられないような金額」を渡したのは、関連会社への見返りを求めたことは明らかで、「収賄罪が成立すると考える余地は十分ある」などと結論付けました。

 「(元助役の)関連会社は関電からの工事受注を主な収入源にしていたのであるから、それは結局は電気利用者らからの電力料金を一部の役職員が懐に入れていたに等しい」「(関電元幹部が)関連会社に発生した利益の一部の還流を受けていたことは、電気料金を支払う電気利用者や株主及び一般従業員への裏切り行為であって、強い非難に値する」。議決書は、透明性・公正性が強く求められる公益性の高い関電で不正がまかり通っていたことを指弾しました。しかし、関電は疑惑を徹底解明する姿勢がありません。検察審の議決についても「お答えする立場にない」とのコメントです。関電の責任が問われています。

政治による解明も不可欠

 元助役には、国会議員や地方議員に広い人脈があったとされます。関電が問題を長年隠蔽(いんぺい)したのも原発増設時の「暗部の暴露」(関電の第三者委員会報告書)を恐れ、原発の「安定的な運営・稼働」に支障がないようにするためと言われます。政治による「原発マネー」の解明が改めて求められます。

(「しんぶん赤旗」2022年8月5日より転載)