現職 国言いなり、公約投げ捨て
新潟県知事選(29日投票)で、日本共産党を含む野党と幅広い層の市民が支援する新人の片桐なおみ候補=無所属=は、各地で「原発なくして病院残す」と訴え、支持を広げています。東京電力柏崎刈羽原発の再稼働の是非、県立13病院の存続などを争点に、現職の花角英世知事=無所属=を激しく追い上げています。
片桐候補は、ウクライナで欧州最大のザポロジエ原発が攻撃されたことなどから、「戦争になれば原発が標的にされる」「原発を残したまま死ねない」と、出馬を決意。再稼働反対を政策の「一丁目一番地」に掲げています。
対する花角氏は、4年前の知事選で「三つの検証が終わるまで再稼働の議論はしない。再稼働の是非は、県民に信を問う」と訴えていたのに、今回の選挙公報には「信を問う」の文言は消え去り、地元紙インタビューにも「信を問う方法はまだ決めていない」(「新潟日報」17日付)と答えています。
背景に官邸与党
県の「三つの検証」への態度も、両候補の違いは鮮明です。
現職がこの4年間の任期中に開催した「検証総括委員会」は、1回だけ。2021年3月末、技術委員会の一部委員を再任せず、健康・生活委員会などのとりまとめを急がせる動きなど、徹底的な検証を妨げてきました。
背景には、現職を推している官邸与党や電力資本の動きがあります。2020年1月から約1年間、原発再稼働への地ならしをもくろむ経済産業省幹部らが80回も新潟県入りし、10月には現職知事自身が資源エネルギー庁長官と面談していました。
その後、柏崎刈羽原子力発電所で、東電社員が他人のIDを利用して中央制御室に不正入室していた問題や、核セキュリティー施設が故障したまま放置されていた問題などが相次いで発覚し、再稼働への動きは頓挫しています。
しかし、次期知事の4年間の任期中に、世界最大出力の柏崎刈羽原発の再稼働の是非が改めて問われることは必至です。
こうした下で、「国の言いなりにはなりません」「再稼働はさせません」と訴える片桐候補か、それとも「県民に信を問う」との公約を投げ捨てた現職か、争点・対決点はクッキリしています。
新潟県は、人口当たりの医師数が全国最下位クラスであり、県民の命と健康を守る地域医療をどうするのかという問題も、大争点です。
現職は、「適切な医療が受けられる健康立県を目指す」と言いながら、実際に進めているのは公立・公的病院の再編と病床削減の推進です。
13の県立病院は、豪雪地帯などに住む県民の命と健康を支える「とりで」です。にもかかわらず現職は、へき地4病院の松代(十日町市)、柿崎(上越市)、津川(阿賀町)、妙高(妙高市)を市町に移譲し、加茂(加茂市)、吉田(燕市)の2病院は民営化する方針です。
急性期病床削減
しかも現職は、国の医療費削減を狙った「地域医療構想」の具体化を、全国に先駆けて積極的に推進しています。昨年4月にまとめた「グランドデザイン」に基づいて、高度医療を担う病院に機能を集中させ、周辺の病院は急性期に対応する病床を、大幅に削減しようとしています。
医師確保対策なども医療費抑制を目指す国に追随して、共産党が求める国による医師派遣制度などには踏み込みません。
地元紙が1月に報じた世論調査では、病院再編の見直しを求める声が84%にも上りました。
現職がよりどころとする国でさえ、新型コロナ禍で「公立病院の役割が改めて認識された」として、従来の「統廃合ありき」の方針を軌道修正しました。
一方、「県立13病院の民営化や市町への移譲をやめ、きめ細かい地域医療を守り抜く」と断言する片桐候補の主張は、県民の願いに沿うものです。
また片桐候補は、県の入札制度や物品購入費などの見直しを進め、全国的にも突出している公共事業費などにメスを入れれば、県予算1兆3000億円の約1割を福祉や教育に回すことができ、県立病院の存続なども十分可能だと、力強く訴えています。
(「しんぶん赤旗」2022年5月22日より転載)