東京電力福島第1原発4号機の使用済み核燃料貯蔵プールからの燃料取り出し作業が、今月中旬に始まる見込みです。どんな作業が行われ、どういう課題があるのでしょうか。
(中村秀生)
Q1 事故発生時、燃料プールは?
2011年3月11日の地震・津波発生の4日後の15日、4号機の原子炉建屋は水素爆発で損壊しました。
定期検査中だったため、原子炉内の燃料(548本)はすべて原子炉建屋上部にあるプール内に移されていました。プールには未使用の燃料204本を含めて計1535本の燃料集合体があり、そこに爆発で作業台車用階段や足場板、金属片などが落下しました。
当初、原子炉停止から間もない燃料が入っている4号機プールは崩壊熱による発熱が大きく、冷却不能による燃料溶融が心配され、海水注入されました。
Q2 現在の状況は?
爆発で損傷した建屋の崩壊やプールの底が抜けてしまうこと、注水した海水の塩分で燃料やプールの腐食がどれだけ進んでいるかなどが懸念されます。
東電は、プール底部の補強工事、建屋の壁の検査、燃料の腐食試験などを行った結果、健全性が保たれていると説明しています。
燃料取り出し作業に向けて、放射性物質の外への飛散・拡散を抑えるために建屋を覆う「燃料取り出し用カバー」を設置。がれき撤去を進めています。
未使用の燃料2本を試験的に取り出したため現在、プール内の燃料は計1533本。
一方、燃料の移動先の敷地内共用プールに、6840本の容量にたいして6375本の燃料が保管されていたため、別の保管設備に順次移送しています。
Q3 燃料取り出し計画とは?
東電は、燃料の健全性を確認したうえで、未使用の燃料から取り出すとしています。
作業の手順は、(1)プール内のラック(棚)にある燃料集合体を、燃料取り扱い機を使って水中で1本ずつ構内用輸送容器(キャスク)に移し替える(2)キャスクをクレーンでつり上げて床上の作業場所に移動(3)キャスクのふたを閉め、除染を実施(4)クレーンでキャスクを地上までおろしてトレーラーに搭載(5)共用プールに運搬する―計画です。
キャスクは長さ約5・5メートル、直径約2・1メートルの円筒形。最大22本の燃料集合体を収納でき、燃料を含めた重量は約91トンです。
2014年末の完了をめざす予定。
Q4 作業に危険はないの?
落下したがれきの悪影響が心配されます。衝撃で上部が変形したり、燃料集合体を覆うカバーとラックのすき間に異物がはさまっていて抜き出すときにひっかかる可能性があります。燃料取り出し前に異物を除去すること、荷重を監視することでひっかかりを防止することが課題です。
原子力規制委員会の検討会では、ひっかかりを検知する荷重変動の判断基準や過去のトラブルを踏まえた対応について、疑問が出されました。
通常の燃料取り出しは自動操作でできますが、事故後に新たに設置した燃料取り扱い機は手動のため、運転員の技量も必要です。通常よりも高い放射線量の環境下、作業員の被ばくの低減も重要です。
慎重な作業が求められます。
使用済み核燃料 通常の原発で使う核燃料は、ウラン酸化物を焼き固めたペレット(1センチメートルの円柱形)数百個が燃料棒と呼ばれる細長い棒に収められています。燃料棒を数十本、1辺十数センチメートルの正方形に束ねたものが燃料集合体で、長さ約4・5メートル。使用後、プルトニウムやアメリシウムなどのほか、ヨウ素、セシウム、ストロンチウムなどの核分裂生成物ができます。