東京電力福島第1原発事故の発生から11年―。今年2月には1号機の原子炉格納容器内の調査が始まりましたが、溶け落ちた核燃料(デブリ)の全容解明にはほど遠く、事故収束の道筋はみえていません。一方、政府と東電は、タンクにたまった汚染水の海洋放出に向けて前のめりで突き進んでいます。(「原発」取材班)
炉心溶融(メルトダウン)を起こした1~3号機の原子炉建屋などに雨水や地下水が流入し、日々、汚染水が増え続けています。
国民置き去り
この汚染水からセシウムなどを除去した「アルプス(ALPS)処理水」には、放出基準値よりもはるかに高濃度のトリチウム(3重水素)が残留しており、そのまま環境に放出できません。構内の約1000基のタンク群には、処理途中の水を含む約130万トンがためられています。
政府と東電は昨年4月、処理水を基準値未満に薄めて海洋放出する方針の決定を強行。風評被害を心配する福島の漁業者をはじめ多くの国民の反対や懸念の声を置き去りにしたまま、来春ごろの放出開始に向け着々と準備を進めています。
一方、建屋への地下水流入の抑制対策の一つ「凍土壁」ではトラブルが頻発。汚染水問題の根本解決の見通しもありません。
汚染水の処理過程で発生する泥状の放射性廃棄物(スラリー)の保管容器の劣化への対応も遅れています。
道筋は不透明
事故収束作業の“本丸”とされるのがデブリ取り出しです。核燃料や炉心構造物などが溶けて混ざり冷え固まったものがデブリで、1~3号機の総量は推定600~1100トン規模。どうやって取り出すのか、道筋はまったく不透明です。
2号機では、ロボットアームで今年中にデブリを試験採取する準備が進みますが、採取するのはわずか数グラムです。1号機では先月、水中ロボットによる格納容器内の調査で堆積物を確認。デブリの状況や分布を調べるのはこれからです。
使用済み核燃料プールの燃料取り出しも道半ばです。3号機は昨年ようやく完了しましたが、2号機は24~26年度、1号機は27~28年度の取り出し開始をめざし、準備作業を進めています。全6基の完了目標は31年です。
(「しんぶん赤旗」2022年3月12日より転載)