東日本大震災の発生から11年です。巨大地震と大津波が岩手、宮城、福島の3県を中心に東日本一帯を襲い、電源喪失した東京電力福島第1原発は過酷事故を引き起こしました。かつてない複合災害の被害はあまりに甚大で、多くの被災者の暮らしと生業は震災前の水準に届いていません。時間がたつにつれ、震災直後とは異なる苦難を抱える人も少なくありません。被災地の人たちの生活が再建できなければ、地域の再生にもつながりません。国は支援の手を緩めてはなりません。
新たな苦難解決へ支援を
コロナ感染拡大の影響は被災地でも深刻です。主要産業である漁業や水産加工業、観光業では売り上げの減少などに苦しんでいます。燃料価格高騰によるコスト高も重なり借入金の返済が困難な事業者も少なくありません。被災を乗り越えようとしている事業者がつまずくようなことがあっては、これまでの努力が報われません。政府は被災地の産業の実態を的確に把握し、ニーズに応じた支援策を講じる必要があります。
被災者の住まいについても課題があります。その一つが、一定以上の所得のある世帯の災害公営住宅の家賃の増加です。期限を設けた減免が段階的に廃止され、生活苦に追い打ちをかけています。家賃が上がった働き盛り世帯が退去し、災害公営住宅の高齢化が加速する危険があります。機械的対応でなく、支援の継続・強化を検討すべきです。
災害公営住宅に入居した被災者同士のつながりの希薄化も問題です。被災前に居た地域や仮設住宅で育まれた人間関係とは無縁の住宅に住む場合も多く、高齢者らは家に閉じこもりがちです。災害公営住宅の「孤独死」も後を絶ちません。コロナ感染拡大以降は、地域の交流会も中止・縮小され、住民のつながる機会が失われていることにも不安の声が出ています。
住民交流の支援をしているNPOなどへの公的支援が減らされていることも大きな問題です。被災者を心身ともに支えるきめ細やかな取り組みを一層強めなければなりません。ところが岸田文雄政権は心のケアやコミュニティーづくりなどの支援予算を減額しています。この姿勢を改め、手厚い財政措置をとるべきです。
原発事故は依然収束していません。放射能汚染の影響によって福島県ではいまも多くの人が避難を続けています。避難指示の解除を進める一方、住民の求める「全域の除染」に応じない政府に不信が募っています。「風評被害」を懸念する漁業関係者との約束を守らず、汚染水の海洋放出計画を進めることは、復興への障害です。
福島の置かれている現状は、原発がひとたび重大な事故を起こせば、いかに長期にわたって広い地域にはかり知れない被害を及ぼすかを示しています。「原発ゼロ」の日本の実現は急務です。
災害から命守る政治こそ
東日本大震災後も地震被害は繰り返され火山災害も続いています。気候変動による豪雨や台風、豪雪による被害も相次いでいます。日本には災害に無縁なところはありません。東日本大震災の被災者支援と復興に全力を挙げ、その教訓を生かした政治に転換することが、災害から国民の命と暮らしを守る最大の力です。
(「しんぶん赤旗」2022年3月11日より転載)