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原発6基新設へ 仏国内 批判噴出・・コスト際限ない 核ゴミ増やす

ゼネラル・エレクトリックの工場で演説するマクロン仏大統領=10日、仏東部ベルフォール(ロイター)

 【ベルリン=桑野白馬】フランスのマクロン大統領が2月10日、温暖化対策の名目で原子力発電所6基の新設や、既存原発の寿命の延長の方針を発表したことに対し、環境団体からは、事故や核廃棄物の危険性や、膨大な費用を理由に批判が噴出しています。

 マクロン氏は東部ベルフォールで演説し、「脱炭素実現のために、原発推進が必要」とし、「仏原子力産業の復活」を打ち上げました。新設される原発は、これまでも建設費高騰やトラブルが多発してきた欧州加圧水型炉(EPR)の改良型とされます。最も早くて2028年着工、35年に稼働開始を目指します。これとは別に8基について事前調査を行うとしており、もし認可されれば計14基の大増設となります。

 フランスで最後に原発が建設着工されたのは07年のフラマンビルのEPR。工事のトラブルが続出し、12年の稼働予定は23年にずれ込んでいます。

 マクロン氏は、赤字体質のフランス電力(EDF)に多額の税金投入や政府保証で、原発建設を支える意向を表明しました。EDFは、6基の建設費用は、500億ユーロ(約6兆5500億円)程度と見積もっています。

 気候変動の専門家団体でつくる「レゾー・アクション・クリマ」は声明で、原発新設は「再生可能エネルギーの導入を遅らせ、コストも際限なくかさむ」と批判。脱炭素を進めるには再生エネルギー導入計画とともに「節電やエネルギー効率化を含めた包括的な計画」が必要だと主張しました。

 また再生可能エネルギーへの移行を進める団体「ネガワット」は、原子力に対する「フランスの依存症を深める」と非難。

 平和団体の「核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)・フランス」は声明で、原発推進の表明は核抑止政策への依存を強めるもので、「事故の際のリスク、核のゴミ」を増やすと厳しく批判しました。

 11年の福島第1原発事故を契機に、フランス政府は老朽原発の閉鎖を進めて、原子力への依存度を35年までに、現行の70%から50%に引き下げる方針でした。

 これに逆行する今回の方針について、マクロン氏は、福島第1原発事故後、「いくつかの国は過激な選択を行い、原発に背を向けた」が、「フランスはそうした選択をしなかった」と正当化しました。

(「しんぶん赤旗」2022年2月13日より転載)