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福島第1原発 たまる核廃棄物 迫る耐用の期限・・高線量 劣化対応に苦慮

東京電力福島第1原発での高性能容器の交換風景。ステンレス製の補強体に入れて取り扱われています(東京電力提供)

 東京電力福島第1原発の廃炉の見通しが立たないなか、敷地には大量の放射性廃棄物がたまり続けています。その一つが、高濃度の放射性物質を含む泥状廃棄物(スラリー)です。東電は、その保管容器が放射線で劣化したため、新しい容器へ早急に移し替える必要に迫られています。(松沼環)

 福島第1原発1~3号機には、核燃料デブリ(核燃料や原子炉構造物などが溶けて固まったもの)があり、それに触れた冷却水が高濃度の放射能汚染水となって原子炉建屋内にたまっています。そこに地下水や雨水が流れ込み、汚染水が日々増え続けています。これを多核種除去設備(アルプス)で処理し、高濃度のトリチウムなどが残存する処理後の汚染水をタンクに保管しています。

処理過程で発生

 その処理過程で、炭酸塩などを主体とするスラリーが発生します。東電は、強アルカリ性溶液を含むスラリーを直径約1・5メートル、高さ約1・8メートルのポリエチレン製の容器(HIC=ヒック)に充てん。現在、敷地内に約3400基のヒックが保管されています。

 スラリーは、ベータ線核種のストロンチウム90を高濃度に含むほか、炉心由来の多様な放射性核種が含まれます。多いものではヒック1基に1兆ベクレル以上のストロンチウム90を含みます。ポリエチレンは、紫外線や放射線で劣化します。累積の放射線吸収線量が5000キログレイ(グレイは物質が浴びた放射線のエネルギーを表す単位)に達するとスラリー漏えいのリスクが高まります。東電は、その量に到達するのは早くても2025年以降としていました。

 この評価に対し、原子力規制委員会は、スラリーが容器の底に沈降することへの東電の考慮が不十分と指摘。規制委の評価で、昨年5月ですでに31基が5000キログレイを超過し、その後2年でさらに56基が超えるという結果になりました。

脱水した炭酸塩スラリー(東京電力提供)

トラブルで遅れ

 東電は当初、昨年8月をめどに高線量を浴びた31基を新たなヒックへ移し替え始めるとしていました。しかし、手順を確認するために実施した低線量ヒックの移し替えでトラブルが続き計画が遅れています。東電は、安全対策を確認しだい、高線量ヒックの移し替えを行うとしています。

 その後はどうするのか。東電は漏えいなどのリスクを低減するため、スラリーを圧搾(あっさく)し、脱水・固化する方針です。すでに規制委に計画を申請しています。

 しかし、脱水・固化した放射性廃棄物は飛散しやすくなります。また、保管先になる、

脱水前の炭酸塩スラリー(東京電力提供)

ポリエチレンで内張りを施した鋼製容器の耐用年数など課題があります。

 さらにスラリーを最終的にどう処分するかは、決まっていません。脱水・固化した放射性物質は飛散しやすく取り扱いが難しくなるため、最終的な廃棄体作成の障害にならないか懸念もあります。

東電任せにせず検討を

 舘野淳・元中央大学教授(核燃料化学)の話 廃炉では溶融デブリの取り出し等に関心が向いていますが、いったん汚染水に溶け出たものもかなり線量が高く、これをどうするのかも大きな問題です。リスクの低減であっても中途半端なことをして、最終的な処分の障害になる可能性もあります。作業員の被ばくの危険性もあり、二度手間になるようではいけません。体制を含めた検討が必要です。東電任せでなく、廃棄のための基本的な考えを確立したうえで取り掛かるべきです。

(「しんぶん赤旗」2022年1月13日より転載)