2022年が始まりました。岸田文雄首相が「新しい資本主義」を掲げたことを受けて、新年から「資本主義」という言葉が大手メディアにもあふれました。財界・経済団体の年頭のあいさつでは、原子力発電に固執する姿勢があらわになっています。「新しい資本主義」といっても、従来型の原発固執の「資本主義」でしかないことがいよいよ鮮明です。
A 大手メディアでは、新年から「資本主義」を取り上げる企画が目立った。たとえば、「日経」の1日付トップの見出しは「資本主義 創り直す」だった。その後、「社説」でも「資本主義を磨く」というタイトルを掲げている。
B 「毎日」は、3日付で「資本主義の見直し」と題した「社説」を掲げた。
C 「読売」も3日付から「岐路の資本主義」という連載を開始したね。
体制側の危機感
A 資本主義の体制側に一定の危機感があることが、見て取れる。
B 経団連の十倉雅和会長は、新年メッセージで「経団連が掲げる『サステイナブルな資本主義』は、岸田総理が目指す『新しい資本主義』と軌を一にするものである」と強調した。そのうえで、「総理を議長とする『新しい資本主義実現会議』では私から、分配は成長とセットで議論すべきであり、まずは成長が重要であることを強調した」と明かした。
C 岸田首相が、まずは「成長」と言い出したのは、財界の圧力があった、ということか。
容認派すら疑問
A 5日に開かれた経団連、経済同友会、日本商工会議所の財界3団体共同記者会見では、十倉経団連会長は、「原発の選択肢を排除することはあり得ない」と述べた。「晴耕雨読の世界にはいまさら戻れず、(社会経済活動には)ベースロード(基幹)電源がいる」と原発への固執姿勢を鮮明にした。
B 経済同友会の桜田謙悟代表幹事も「2030年に温室効果ガス46%削減の目標を達成するのは簡単ではない」「原子力の問題が解決していない。真正面から現実を直視しながら取り組んでいかないといけない」と指摘。日商の三村明夫会頭は、「欧州がクリーンエネルギーに指定しようとしている原子力の位置付けを明確にしなければいけない」と強調した。
C 年頭から財界は、脱原発には反対姿勢を示したんだね。
A 日本鉄鋼連盟は、5日に発表した橋本英二会長の年頭あいさつで、「経済性・安定供給・環境適合のいずれの観点からも優れた電源である原子力発電については、安全性の確保を大前提に最大限活用することが不可欠」とした。
B 日本電機工業会の東原敏昭会長の年頭所感でも「原子力分野では、原子力の再稼働が重要である一方、『小型モジュール炉』も次世代電源として期待されています」と強調した。
A 日本原子力産業協会の新井史朗理事長は、「既存プラント再稼働の早期実現を含む、既存炉の最大限の活用、将来の新増設リプレースの実現に向かって取り組んでまいります」と、推進勢力ぶりをアピールした。
C 原発容認派の原発ウオッチャーでさえ「『小型モジュール炉』なんて言っているけど、巨額の資金を投じて進めるだけの経済合理性があるのか」と疑問を呈していたよ。
A 岸田政権も新年から動いている。萩生田光一経済産業相は6日、グランホルム米エネルギー長官とテレビ会議形式で会談し、新型原発の小型モジュール炉や、高速炉を国際連携して開発するため、日本政府として協力する方針を伝えた。
C 岸田政権がいう「新しい資本主義」の実態が、世論に逆行する原発固執の資本主義でしかないことがいよいよ鮮明になってきたね。
(「しんぶん赤旗」2022年1月8日より転載)