四国電力は12月2日、伊方原発3号機(愛媛県伊方町)を約1年11カ月ぶりに再稼働しました。
四電によると午後7時に原子炉を起動させました。6日に送電を開始し、来年1月4日に営業運転に入る予定。
伊方原発3号機は2019年12月に定期検査に入りましたが、トラブルが繰り返されたほか運転差し止めの仮処分決定(広島高裁)や、テロ対策施設が期限までに完成しなかったことなどから停止が長期化。今年7月には、宿直職員が無断外出し保安規定で定めた人数を欠いていた違反が発覚し、10月の再稼働予定が延期されていました。
事故繰り返さない 叫び続ける 松山で抗議行動
伊方原発をとめる会は12月1日、松山市の四国電力原子力本部前での抗議行動で、「3号機の再稼働は断念せよ」と訴えました。強風の中、30人が集まり、「再稼働許さん」などの横断幕やプラスターを掲げて抗議しました。
須藤昭男事務局長は県議会開会直前に再稼働を了承した中村時広知事に、「議会軽視だ、了承を急いだ理由を示せ」と提出した公開質問状に、「回答は待ってもらいたい」と無責任な対応をする中村知事を厳しく批判。
「私たちは非常に悲しい思いと、激しい怒りと落胆を持って、この場所に集まっている。われわれは、福島原発事故を愛媛で繰り返さないために叫び続けてきた。稼働させてはならない」と訴えました。
ネットワーク市民の窓の武井多佳子県議は「『原発を動かす資格が四電にあるのか』と県民が大きな疑問を持っている中で動かそうとしている。私たちは、断固再稼働に反対します」と訴えました。
日本共産党の片岡朗県常任委員は「事故を起こせば深刻な環境破壊を起こす原発は、なくす以外にない。再稼働されれば、大地震が起きた時に不安でたまらない。みんなの力で廃炉にするために全力を挙げたい」と力を込めました。
解説 問題山積のまま
四国電力が伊方原発3号機を再稼働させました。
同原発が定期検査のため運転停止していた2020年1月、広島高裁が運転を差し止める仮処分決定をしました(3月、四国電の異議が認められ取り消し)。同年1月には核分裂連鎖反応を制御する制御棒を誤って引き抜き、一時的な停電で使用済み燃料プールの冷却が約43分間停止していたことが判明しました。
四国電は今年6月段階で10月に再稼働すると発表。しかし、社員(当時)が重大事故発生時の要員として宿直中、16年以降から無断で発電所外に出ていた保安規定違反の不祥事が7月に発覚。地元から「隠ぺいだ」「四国電に運転資格はない」と批判されるなど、10月の再稼働は先送りされました。
伊方原発は四国唯一の原発で、愛媛県西端の佐田岬半島の付け根に立地し、避難計画の策定が義務づけられている半径30キロ圏内に11万3000人が暮らします。計画で半島の住民が海路で大分県の18市町村に避難する場合も想定。しかし、半島は有数の地すべり地帯で、地震や津波を伴う複合災害になれば避難できるのか。
同原発はウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)を使うプルサーマル運転です。安全上の問題だけでなく、使用済みMOX燃料の処理方法は何一つ決まっておらず行き場がありません。それを増やし続ける無責任さ。問題は山積したままです。
温暖化を口実に原発に固執し続ける岸田政権の原発推進政策の転換が必要です。(「原発」取材班)
(「しんぶん赤旗」2021年12月3日より転載)