規制委に提出
新潟県にある東京電力柏崎刈羽原発でIDカードの不正使用や侵入防止装置の故障を放置し長期にわたって不正な侵入が検知できない不祥事が相次いだ問題で東電は22日、不祥事の根本原因として、核物質防護の重要性の理解不足をはじめ「リスク認識の弱さ」や「核物質防護管理者が現場実態を把握できていない」ことがあったなどとする報告書を原子力規制委員会に提出しました。規制委は今後、のべ2000時間の追加検査を実施し、報告書の事実関係を確認し、再発防止策の実効性を調べることになります。
同原発では、社員が他人のIDカードを無断で持ち出し中央制御室に侵入したことが発覚。今年になって、侵入防止のための装置が複数箇所故障していながら、すぐに復旧せず、代替措置も実効性がなかったため、不正な侵入が検知できない状態が長期にわたっていたことが判明しています。規制委は3月、「核物質防護上、重大な事態になり得る状況」と指摘し、4段階の重要度のうち最悪と評価。是正措置を命令し、事実上、運転が禁止されました。
会見した小林喜光会長は「このような不備があったことにつき、遺憾の一言に尽きます」などと述べ、小早川智明社長、牧野茂徳原子力・立地本部長の2人が月額報酬30%・3カ月の減俸、石井武生柏崎刈羽発電所所長の辞任などを発表しました。
不祥事続出 これまでの経緯
同原発の核セキュリティー上の不備が、最初に明らかになったのは今年1月でした。昨年の9月20日、東電社員が同僚のIDカードを無断で持ち出して中央制御室に入室していたことが今年1月23日に公表されました。また、規制委事務局の原子力規制庁は昨年9月に東電から連絡を受けていましたが、規制委の更田豊志委員長にこの件が伝わったのは1月19日でした。
この件について規制委は2月、重要度について4段階で重い方から3番目の「白」と判定し、東電に改善措置計画を報告するよう指示。東電は3月10日に提出しました。
昨年検査制度が変更されてから「白」以上の判断は初めてでした。
ところが東電が提出した直後の3月16日、規制委は、同原発の複数の侵入検知設備が故障していながら長期間放置され、代替措置も不十分であったとして、重要度について最も重い「赤」と判定したと発表しました。
この問題は今年1月27日、東電が規制庁に侵入検知設備を損傷させたと連絡。それをきっかけに、他にも故障している設備があり、現地調査等から東電の代替措置が不十分であることが判明したものです。
2020年3月以降だけでも侵入防止のための設備の故障が15件あり、うち10件は代替措置も不十分で、不正な侵入が検知できない可能性がある状態が長期にわたってありました。また18年1月~20年3月の間にも侵入検知設備の故障がありながら対応に時間を要していたことが判明しています。
「赤」判定に伴い規制委は、東電に9月23日までに改善措置計画を提出するよう命令しました。また、4月14日には、事実上の運転禁止となる同原発で核燃料の移動を禁じる命令を出しました。
一方で、東電は先月認定された第4次総合特別事業計画では、最短で22年に7号機を、24年に6号機を再稼働させる内容です。
(「しんぶん赤旗」2021年9月23日より転載)