青ひび、二重焼き、駒(馬)の絵などが特徴の福島県浪江町の大堀相馬焼(おおぼりそうまやき)。白河市に避難する窯元に弟子入りして4年目です。粘土を練り、形にしていく「ろくろ回し」に明け暮れています。
「一つの製品を作るのはできても、同じものを早く作るのが難しい。熟達するには10年ぐらいかかるといわれますから」。仕事を終えて家に戻ってからも作業の繰り返し。失敗する夢を何度も見ました。「だが、苦にはなりません。いずれは窯元になりたいと思っている」。言葉に力がこもります。
好きな色は水色系の青磁(せいじ)。「馬の向こうにある空の風景を、自分の色、質感で思い通りに出したいですね。最近、いい感じで色が出始めたのでそれを商品化し、さらにより良いものに詰めていきたい」と声を弾ませます。
兵庫県出身。京都美術工芸大学で学ぶうちに「粘土をぶつけ、自分の考えを形に起こせることや釉薬(ゆうやく)に魅力を感じ、はまった。これを仕事にしていこう」との思いが深まります。大堀相馬焼のインターンシップ(職業体験)に計3回通い、「ここで働き、念願の伝統工芸を受け継ぎたい」と決めました。
4年間に作った製品はマグカップや茶わんなど生活用品約5000個。そのうち半分が今年4月以後の分です。「以前は焦りもあったけど、今は良いものを安定的に作ってお客に渡そうと肝が据わった感じですね」
文・写真 野崎 勇雄
(「しんぶん赤旗」2021年9月21日より転載)