東京電力福島第1原発事故で発生する放射能汚染水を処理した後に残る高濃度のトリチウム(3重水素)汚染水(アルプス処理水)を基準値未満に薄めて海に流す方針について、東電は25日、海底トンネルを設置して1キロ程度沖合で放出する計画を発表しました。
東電によると海底トンネルは直径約2・5メートル程度の鉄筋コンクリート製で、岩盤をくりぬいて敷設します。汚染水を薄めるための海水は、5号機取水路から取水。港湾内の放射性物質の影響を避けるため仕切り堤を設置するなどの工事を行い、港湾外からの海水を取水するとしています。
取水した海水は、あらかじめ放射性物質の濃度を測定した汚染水と、1リットルあたりのトリチウムが1500ベクレル以下となるよう配管内で混合し放出。当面は、希釈した汚染水のトリチウムの濃度を測定してから放出する考えを示しました。
東電は、放出した水を再び取水しないため海底トンネルを選択したといいます。福島第1原発から東約1・5キロ、南北約3・5キロの日常的に漁業がおこなわれていないエリアからの放出になります。
海底トンネルは、関係者に意見を聞いたうえで海底のボーリング調査などを実施し、2023年の春までに完了を目指すとしています。一方、地元や漁業者には、放出そのものへの根強い反対があります。
東電は放出によって風評被害が発生した場合、地域や業種ごとに価格や取引量といった統計データなどを用いて損害を推認する考えを明らかにしました。
(「しんぶん赤旗」2021年8月27日より転載)