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どう見る原発コスト 龍谷大学教授 大島堅一さんに聞く(下) 再エネ100%の日本に

 ――経産省の審議会では、再生可能エネルギーの大量導入に伴う費用が高くつくことで、電気代が数倍になるなどの試算を出しています。

 今までのシステムは、大規模集中型の石炭火力や原発を前提に系統などの電力システムを組んでいました。再エネを主力電源にするために新しい仕組みに入れ替える費用が発生するのは当然です。システムとして入れ替えるための費用で、再エネのコストにだけのせる議論はおかしいです。

原発は高費用

 安定供給のための費用ということであれば、原発にも必要です。原発は、1基の発電量が大きいので、動かなくなった時のバックアップがたいへん大きくなります。実際、今年の1月の電力価格の高騰の引き金を引いたのは、関西電力の原発に定期点検で不具合がみつかり、点検期間が予定外に延びたこと、LNG(液化天然ガス)の調達の遅れです。

 それが原発を電源にすることで必要になる費用です。審議会の議論は、それを全く考えないバランスを欠いた議論です。

 しかも、大規模なバッテリーなどの価格がどんどん安くなっていて、再エネの導入に新たな費用もいらないぐらいになってきます。

 ――どうシステムを変えていくかという議論をしないといけないということですか。

 そうです。原発は現在、全体の6%しか発電していない。6%を20~22%に引き上げるのは相当の努力が必要ですが、再エネはいま20%を超えていますから、原発がなくても問題はありません。

 しかし一度、原発を20~22%にするという目標ができてしまうことの不幸は、それに向けて、いろんな政策が作られることです。再エネのブレーキを踏むことになります。

 原子力に対して後押し、ないしは優遇しない限り、そこまで発電量が伸びることはない。それは国民の大きな負担です。できるだけ早く再稼働させようとか、できるだけ長く使おうとすれば、国民を危険にさらすことにもなります。やるべきではありません。エネルギー基本計画に原発について、「必要な規模を持続的に活用していく」という内容が入ること自体が不幸を生むと思います。

 カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)の実現は、省エネと再生エネルギーを中心とした社会でまかなうべきであって、原発なんてありえません。

次世代に被害

 放射性廃棄物のこともあり、長期的に見れば、今の現役世代が払えない膨大なコストと膨大な放射性廃棄物を次世代の若者に手渡すことが運命づけられている、不公正そのものだからです。

 これは気候変動と同じです。気候変動も今の世代や過去の世代が、全然排出したことがない将来の世代に被害を及ぼすのですから。

 カーボンニュートラルとともに、環境保全型社会を作るということが必要です。省エネを徹底して再エネ100%の日本をつくるということだと思います。

 (おわり)

(「しんぶん赤旗」2021年8月14日より転載)