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どう見る原発コスト 龍谷大学教授 大島堅一さんに聞く(上) 隠せなくなった高費用

 経済産業省は「第6次エネルギー基本計画(素案)」をとりまとめました。2030年に総発電量に占める原発の比率は現行通り20~22%と、相変わらず原発に固執しています。同省はまた、15年以来6年ぶりに電源別の発電コストの検証結果も発表しました。原発のコストに詳しい龍谷大学の大島堅一教授に原発コストの実態、エネルギー基本計画の問題点について聞きました。(松沼環)

 ――今回の原発コストの評価をどう見ますか。

 30年時点の原発発電コストは、1キロワット時当たり「11・7円以上」と発表されました。15年の検証では、原発は1キロワット時当たり「10・3円以上」でした。

 東京電力福島第1原発事故の費用や追加的安全対策費用をコストに加えましたから、原発が安くないことを覆い隠すことができなくなりました。

 しかし、おかしいのは、事故の計算方法と追加的安全対策の計算方法です。

 福島原発事故の費用に関しては、放射性廃棄物の廃棄にかかる費用が入っていません。

 福島原発事故の廃炉で出てくる放射性廃棄物の量は、原子力学会の報告書によれば、原発の廃炉などで発生する比較的放射性レベルの高い廃棄物(L1廃棄物)で比べると、通常の原発1基を廃炉する場合の1000倍を優に超えています。

 国内の約50基の原発の処分も見通しがありませんが、1000基分以上の廃棄物が追加されたのです。安いとか高いとかではなく、国家の危機です。

 追加的安全対策費では、各電力会社に聞くと平均2000億円となりました。しかし経産省の評価では、原発を新設する場合は最初から設計で取り込めるからと、対策にかかる多くの費用を除外して約1400億円になったとしています。しかし、除外される根拠が全く分かりません。ここにも大きな穴があります。

 どちらにしても建設費に関連する資本費の部分にかなりのごまかしがあるので、実態はもう少し高くなります。

前提崩れても

 ――同省審議会で示された発電コストは、モデルプラントを新たに建設した場合の計算ですが、既存の原発の発電コストはどう見ますか。

 15年の同省作業部会で公開された方法を基本に計算すると、11年以降にかかったお金と、かかるだろうお金だけを積み上げて発電量で割るとものすごく高いことが分かりました。

 発電コストは総費用を総発電量で割って単価を求めるのですが、安全対策費が大変高くなっています。東電柏崎刈羽原発(新潟県)では2基の再稼働のために1兆円を超えるお金を出しています。

 再稼働をしていない原発もありますが、今後再稼働をしたとしても残された運転期間が短くなっているので、発電量が少なくなります。

 前回の18年のエネルギー基本計画では、既存の原発について原発は低廉であることを前提に再稼働を進めると書いてありましたが、実際には既存の原発でも、経済的にまったく割に合わない。方針自体が間違っていたということがはっきりしたにもかかわらず、今回の素案にも同様の表現が踏襲されています。

国民を危険に

 ――電力会社などが今、運転期間を通常40年から60年にのばすとか、定期点検や安全対策をしている期間を発電期間から外すべきだと要望していますが。

 そういう要望が出てきていることを非常に危惧しています。法改正を含めた検討の可能性が懸念されています。

 しかし、止まっている期間が長すぎて、見込み違いだっただけです。

 失敗したら自分で責任をとる、それが資本主義のルールです。失敗した経営方針では競争にさらされてその業者は倒れる、あるいはそういう技術はなくなっていくというのが、資本主義です。見込み違いを、国民を危険にさらすことで解消しようとしています。

 (つづく)

(「しんぶん赤旗」2021年8月13日より転載)