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主張 原発汚染水・・海洋放出方針を撤回すべきだ

 菅義偉首相は13日、関係閣僚会議を開き、東京電力福島第1原発でタンクにためている放射能汚染水について、海洋放出処分とすることを決定しました。7日に首相と会談した全国漁業協同組合連合会の岸宏会長、福島県漁業協同組合連合会の野崎哲会長らは「絶対反対」と表明していました。被災地の声を無視した暴挙です。

10年の努力が水泡に帰す

 2011年3月の原発事故による放射能汚染は、多くの住民の暮らしと生業(なりわい)に深刻な被害を及ぼしました。土地も海も汚染され、農林水産業は大きく制約されました。この10年、関係者は、土地、水、生産物の汚染状況を調べながら、事業の再建、復興のための努力を一歩一歩重ねてきました。

 福島の農林水産業の現状は、昨年2月の政府の報告書でも、福島県産の米や和牛肉の価格が震災前より「安い状況が続いている」「消費者の購買行動だけではなく流通構造の問題に発展し風評被害が固定した状態になっている」と指摘されています。

 政府は“薄めて流す”ことを強調します。しかし、トリチウムの総放出量は変わりません。汚染水が海洋放出されるとなれば、農林水産業をはじめ地域への大打撃となることは明らかです。10年の努力が水泡に帰すことにもなりかねません。世論調査でも、71%が反対しています(「読売」3月9日付)。海洋放出に固執せず、タンク増設などの対策をとりつつ、問題解決に英知を結集すべきです。

 福島第1原発では、溶け落ちた核燃料(デブリ)を冷やすために、壊れた原子炉に水を注いでいます。デブリの放射性物質が溶け込んだ汚染水は、原子炉建屋地下に流れ込む地下水と混ざって増量するため、冷却用に再利用する分以外はタンクにためています。

 政府は、タンク増設に限界があるとして、海洋放出の決定を急いできました。昨年2月には、海洋放出が「現実的な選択肢」であり「確実に実施できる」とする報告を出しました。

 一方、政府が昨年4月から10月に実施したヒアリングでは、農協、漁協、森林組合が「反対」と明言し、商工団体や自治体も風評被害や復興の妨げとなることへの懸念を表明しました。

 特に全漁連は、昨年6月の総会で「海洋放出に断固反対する」との特別決議を全会一致で採択しています。10月には、政府に対して、「海洋放出されることになれば、風評被害の発生は必至」であり、その影響は「我が国漁業の将来に壊滅的な影響を与えかねない」として、「我が国漁業者の総意として、絶対反対である」と訴えました。

 政府方針は、「風評影響を最大限抑制する」としていますが、賠償を含めた風評対策の実施は東京電力任せで、政府の責任は棚上げです。そもそも新たな被害を政府がつくりだすこと自体が、復興に逆行するものです。

被災地の復興に責任持て

 汚染水が増え続けるのは、原発事故が収束していないためです。そのしわ寄せを、事故を引き起こした東京電力と政府が、事故被害者に押し付けるなど、許されるものではありません。

 菅首相は、被災地復興への責任を自覚し、復興の妨害となる海洋放出方針を撤回すべきです。

(「しんぶん赤旗」2021年4月14日より転載)