東京電力福島第1原発事故で被災者となった福島県いわき市の市民1512人が東京電力と国を相手取り、原状回復と完全賠償(請求額合計約27億円)を求めている、いわき市民訴訟(伊東達也原告団長)の判決(昨年10月結審)が26日、福島地裁いわき支部(名島亨卓裁判長)であります。
2011年3月の事故直後、市民の半数が緊急避難するなど放射能にたいする恐怖がいわき市街に一気に広がりました。
いわき市民は、「風が怖く、雨が怖く、外の空気を吸うことさえも怖かった」と、10年前の出来事を今も鮮明に記憶しています。
裁判では、巨大津波を「予見できたか」、被害を回避する「結果回避が可能だったか」、放射線量が比較的低い地域での損害をどう認定するか―などが争われました。
原発事故直後のいわき市民は、死傷への恐怖などでパニックに陥り、多くの人が避難することを選択しました。避難できなかった市民はゴーストタウン化した市内に残り、放射能による死傷への恐怖を体験しました。
伊東団長は「福島地裁いわき支部は、昨年10月と今年2月にあった同種の裁判で東京電力を免罪する不当な判決を出していますが、今回は厳正で公正な判決を望みます」と話しています。
原告の一人、佐久間修代さん(78)は、事故前から「いわき市の原発の安全を求める会」に加入して原発の危険性や原発推進の現状について科学者の講演をよく聞きに行っていました。
大震災から3日後から被災者への炊き出しを開始。義母が入所していた施設の職員らが福島市に避難したため人手不足となりボランティアをしました。
「原発事故は人災です。やるべきことをやっていたならば防げたのです。加害者である国と東電は法的責任を認めて謝ってほしい。津波で亡くなった人たちの捜索も放射線量が高く遅れました。命と暮らしを守り続けるためにも原発は要りません。再稼働はさせません」
(「しんぶん赤旗」2021年3月25日より転載)