首都圏反原発連合(反原連)が7日開いた「原発ゼロ☆国会前集会―原発事故から10年・福島とともに―」。各界各分野の著名人や市民らがスピーチし、福島復興への支援と「原発ゼロ」の取り組みを訴えました。要旨を紹介します。
主催者あいさつ
これからも声をあげる
反原連 ミサオ・レッドウルフさん
原発事故から10年ですが、家に戻れない人が2万人、自主避難している人が8万人、原発の廃炉も見通しが立っていません。戻れない人がいるのに原発を進めるとは、とても恥ずかしいことです。
活動は休止しますが解散はしません。原発ゼロになるまでは、何かあればアクションを起こせるようにしておきたいと思います。
「脱炭素」と言って圧倒的な脱原発の世論を無視して原発を進めようとしていますが、ドイツは2022年に脱原発できるといいます。日本こそ世界の脱原発をリードしなくてはなりません。これからもみなさんと一緒に声をあげていきます。
もの言い続ける市民に
作家 落合恵子さん
福島の原発事故から、10年です。「もう10年」、「まだ10年」と言う人もみんな脱原発への思いは一つです。
いま、緊急事態宣言と聞くと新型コロナと結びつきますが、「原子力緊急事態宣言」は今も解除されていません。10年、まったく解除されていないままだということを忘れてはなりません。被災した人の苦しみも何も変わっていません。
だからこそ私たちは、一人ひとりの違いを持ちながらも声を上げていきましょう。もの言わぬ市民がもの言わぬ社会をつくるということを忘れずに、ものを言い続けていきましょう。
運動再スタート楽しみ
元西武百貨店社長・元参院議員 水野誠一さん
パートナーの木内みどりは、原発事故が起きた時に初めて「前は原発の話はよくわからなかったけど、原発は危ないものなのね」といってくれました。
それを機に原発反対のデモに一人でも参加し、皆さんと交流してきました。原発ゼロのとば口に立っているときに去らなければいけないことは無念だったと思いますが、運動が再スタートすることを楽しみにしています。
カーボンンニュートラル(炭素中立)といって原発をゼロにすると言わないのでは意味がありません。これからも皆さんの反原発運動が広がっていくことを切に希望します。
11日過ぎても忘れずに
落語家 立川談四楼さん
原発の話で言うとしたら、まず「安倍晋三こら。なにがアンダーコントロールだ。なんてこと言ってオリンピックを持ってきたんだよ」と言いたい。
私も東日本大震災直後に福島県に行きました。原発の近くまで行ったことがあります。その時に初めて地鳴りを経験しました。あの地鳴りだけは10年たっても、まだ忘れられません。
このところ、よく震災関連のニュースやドラマが放送されています。みなさんどうか、11日を過ぎても、震災を忘れずに「原発ゼロ」を目指しましょう。
生活の中から発言する
精神科医 香山リカさん
反原連の集会では日ごろ政治問題を考えない子育て中の親、高齢者をかかえる家族らが詰めかけ、原発をやめてほしいと訴えた。しかし、安倍政権下で原発批判は政権たたきと言われ、生活の中から原発をやめてほしいと訴えた人たちは声を上げづらくなりました。
この間の東北地震で原発問題は私たちの生活、命、健康の問題だったと改めて思い出しました。生活の中からの反原発を発言していきたい。
同時に、原発ゼロ・脱原発は、政治の力で変えていかなくてはいけません。政治問題としての原発ゼロにも取り組んでいきます。
政権に冷や水浴びせた
哲学者 西谷修さん
反原連が始めたのは、政党でも圧力団体でも組織でもない人たちが場をつくり、慣習的な政治に“冷や水”をぶっかけたことです。
一人一人が開かれた場所で声を上げる、これが公共です。お互い響き合い、力になるときに、日本では政治が公共のものになったと言えます。
官邸政治に冷や水を浴びせ続けてきたおかげで、原発は止まらないものの、経年劣化を引き起こしました。日本の政治構造そのものも経年劣化し、もう持たない状況です。反原連の再生に期待し、いろんなところに集まっていきましょう。
前に進める政治実現を
作家 中沢けいさん
反原連の皆さんが抗議集会のスタイルをつくり9年。義務教育を終わるくらいの時間をかけたことに、大変敬意を表したい。
2月の地震で、深刻な事態を引き起こしかねない事故処理中の原発を抱えている国です。政治と生活はこんなに結びついていると、良く分かったのが原発事故でした。
与野党が協力して脱原発に向かってくれるなら、「菅辞めろ」と言わない。しかし、与党は原発やめると言っていません。次の選挙、ぜひ皆さんのお力で、前に進める政治を実現できるように、私も頑張ります。一緒に頑張ってもらいたい。
希望はあると伝えよう
元経産官僚 古賀茂明さん
私は、原発はやめられると思います。先日も大きな地震がありました。日本は、21世紀に入ってから大きな地震が毎年のように起きています。しかし、ほぼすべての原発がそうした規模の地震に耐えられる設計になっていません。電力会社は裁判などで、「原発の周りでは大地震は来ない」といっています。
難しいことはいりません。私たちは、「なぜ原発の敷地だけ大きな地震が来ないといえるのか」を、推進する人たちに問えばいい。原発ゼロを諦める必要はないし、希望を持っています。そのことを多くの人に伝えていきましょう。
これは絶対に勝つ運動
社会学者 小熊英二さん
福島第1原発事故の後、日本社会に大きな変化がありました。原発ゼロが圧倒的な世論となり、稼働原発も減っていることです。この変化は、運動によって起きたことは言うまでもありません。
2011年の時から、この運動は「絶対に勝つ運動」だと思っています。その思いは今も変わっていません。日本は急速に脱原発への道を進んでいますが、ドイツをはじめ各国との違いは政治家がそれを宣言していないということだけです。
原発ゼロを求める運動は、すでに成功した運動だと考えています。こうした運動に随伴することができて光栄です。
(「しんぶん赤旗」2021年3月8日より転載)